原田裕規は1989年生まれ、2016年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。これまで、社会的には「取るに足らない」とされているにもかかわらず、人々が嫉妬や恐怖といった強い感情を向けてしまう事象にスポットを当て、作品制作や展覧会の企画、テキストの執筆を行ってきた。
13年には編著書の『ラッセンとは何だったのか?』(フィルムアート社)を刊行。また、昨年は個展「心霊写真/ニュージャージー」(Kanzan Gallery)を開催し、ファウンド・フォトの手法を取り入れながら、誰が撮影したか、誰がそれを発見したかの境界をあいまいにするような展示を行った。
そんな原田が今回、原爆の図 丸木美術館で個展を開催。広島で被爆した祖父を持つ原田は、その経験に一定の当事者性を覚えながらも、当事者を自認することができない、いわば「越えられない壁」に直面していた。しかしある時から、その壁は原田だけでなく、残されたすべての人々に共通して存在するものではないかと考えるようになる。
本展で原田は、そのイマジナリーな壁を「写真の壁」に見立てて発表。17年から収集を続ける膨大なイメージ(写真)を用いた6メートル近くの「写真の壁」を展示室に出現させ、私たちがイメージのまとまりに対してどのような関係性を構築しうるかを問いかける。
なお本展では、原田による(心霊)写真をテーマにした新旧作品もあわせて展示予定。近年写真と向き合い続けてきた原田の、新しい展開を見ることができるだろう。