「地域アート」とは、評論家・藤田直哉が2014年に発表した論考(「前衛のゾンビたち―地域アートの諸問題」『すばる』2014年10月号、集英社)の中で、近年、多数開かれている地域名を冠した芸術祭などのアートイベントを指す言葉として提示されたもの。
その言葉に誘発されるように、いまもなお「地域アート」や、それにまつわる問題について多くの発言がなされ、ひとつの大きな現象が形成された。住民、コミュニティ、自治体、事業体をめぐって湧き起こる個人的な感情までもが含まれる「地域」という言葉。それを抱く「地域アート」という概念は、拡大解釈されながら語られている。
「地域アート」と呼ばれる活動の形態も、国際芸術祭、地方芸術祭、アートプロジェクト、地方美術館のプロジェクト、ソーシャリー・エンゲージド・アート、サポーター活動、地域活性など、それぞれが少しずつ重なりあいながら、異なる性質を持つものだ。
そこで青森県の十和田市現代美術館は「『地域アート』はどこにある?」プロジェクトの第1弾としてクロストークを実施。本イベントでは「地域アート」に関連する様々な概念を丁寧にすくい上げ、その意義、成果、可能性、問題点を洗い出すことによって、すべてがまとまって認知される現状に楔を打ち込むことを試みる。
本来、「地域アート」が語ろうとしていたものは何か。その何かを「地域アート」と呼ぶべきなのか。今日のアートシーンで存在感を放つ人物が「地域アート」と呼ばれる事象について、2日間にわたって語り合う。
初日は、藤田直哉のほか、林曉甫(NPO法人インビジブル理事長)、⾦澤韻(インディペンデント・キュレーター/十和田市現代美術館 学芸統括)、原⽥裕規(美術家)が登壇。2日目は、藤井光(アーティスト/映像作家)、現代芸術活動チーム「目【mé】」、星野太(美学・表象文化論専門)らが参加する。
様々な立場から賛否両論あわせて語られ、その領域に関わる当事者の多さを物語る「地域アート」。その言葉の射程を再考する機会となるだろう。