1999年に写真集『東京郊外 TOKYO SUBURBIA』(光琳社出版)で第24回木村伊兵衛写真賞を受賞し、現在に至るまで写真表現において第一線で活躍する写真家・ホンマタカシ。現在、その個展「Looking through - Le Corbusier windows」が、東京・六本木のTARO NASUで開催されている。会期は10月12日まで。
本展でホンマは、古今東西、美術史のなかでモチーフとして重要な役割を果たし、様々な意味を託されてきた「窓」にフォーカス。カメラ・オブスキュラと窓の親密性や、産業革命以降に発展した窓と近代社会の関係性など、「窓」が暗示するものは、これまでもホンマの作品世界に重要な構成要素として内包されてきた。
近年、ホンマは建築を主題とするシリーズを継続的に手がけている。ル・コルビュジエ建築の窓に焦点を当てた本展も、窓が撮りたかったわけではなく、自分が撮りたいように建築を撮るために窓を使ったのだという。
外から建築を覗き込む視線だけでは、その建築の本質に迫ることはできないと考えたホンマは、窓の内から外へという視線にもその本質となる手がかりが潜んでいるとして、窓越しに眺める景色を通して、写真には写り込まないその建築物の全貌を、抽象的かつ観念的なイメージとしてとらえることを試みた。
ホンマにとって、ル・コルビュジエ建築の窓から眺める景色を撮影することは、偉大な建築家の視線を追体験し、ル・コルビュジエ建築の内部に思いを巡らせる行為であったという。ホンマの眼差しが切り取った世界の断片として、鑑賞者の眼前に立ち現れる建築イメージを目撃したい。