近年国際的に評価が高まっている「もの派」と呼ばれる動向。この見直しを契機として、1960年代末から70年代にかけての美術状況を記録写真や資料との関係から検証する展覧会「DECODE/出来事と記録-ポスト工業化社会の美術」が、埼玉県立近代美術館で開催される。会期は9月14日〜11月4日。
本展は3つの柱から構成。その起点となる1つ目は、今年5月に逝去した作家・関根伸夫の代表作《位相―大地》に関する検証だ。同館は2005年、関根とともに記録写真をベースとしたスライドショー形式の《映像版 位相―大地》を制作。今回は同作とともに、17年から調査が進んでいる「関根伸夫資料」の数々を見ることができる。
2つ目は、前述の「関根伸夫資料」を含む「もの派アーカイヴ」。これは、同館が多摩美術大学アートアーカイヴセンターと共同で進めるプロジェクト。本展ではこれら記録写真や資料を主軸に据え、作品が現存しない状況を逆手に取って「もの派」を相対的にとらえ直すことを試みる。
そして3つ目は、「もの派」に限らない幅広い世代・多様なジャンルによる作品の展示だ。本展では「出来事としての作品」を制作するアーティストだけでなく、「出来事の記録者」にもフォーカスして紹介。加えて映像に造詣の深い建築家の鈴木了二や、写真家・小松浩子ら60年代生まれの表現者も参加し、建築と写真・映像の双方から「もの派」の原理を紐解く。
これら3つのアプローチから「もの派」の枠組みを強化することなく、相対的に検証することを試みる本展。その起点となった1968年から現代にいたる50年を広く「ポスト工業化社会の時代」ととらえることで浮かび上がる「ポスト工業化社会の美術」の見取り図に注目したい。