ヘアスタイリングとメイクアップの両方を指す「ヘアメイク」は、美術やファッションの領域だけでなく、映像や舞台、パフォーミングアーツなど、今日の様々な表現に欠かすことのできないものとなっている。
そんなヘアメイクの現在と可能性を、いま注目のヘアメイクアップアーティスト・計良宏文(けら・ひろふみ)の仕事を通してとらえる展覧会「MAY I START? 計良宏文の越境するヘアメイク」が、埼玉県立近代美術館で開催される。
計良は1971年生まれ、資生堂トップヘアメイクアーティスト。国内外のブランドのファッションショーやカタログでのヘアメイクに加えて、森村泰昌や蜷川実花、写真家で華道家の勅使河原城一など、様々なジャンルのアーティストとコラボレーションを展開してきた。
本展の中心となるのは、MIKIO SAKABEを率いるデザイナー・坂部三樹郎と計良による新作映像インスタレーション《FACE》。計良がヘアメイクを、坂部が衣装のスタイリングを担当し、ひとりの女性の顔がヘアメイクによって多彩な女性像に変化する様を約40台のディスプレイを用いて表現する。
そのほかにも、計良が携わったANREALAGE、SOMARTA、MIKIO SAKABE、writtenafterwards、LIMI feuの5ブランドとの仕事を、ウィッグやヘッドピース、制作時の資料を加えて紹介。また「森村泰昌展 ベラスケス頌:侍女たちは夜に甦る」(資生堂ギャラリー、2013)から続く森村作品への参加や、人形遣い・勘緑の公演に提供する文楽人形のかしら(頭部)の制作など、多彩なコラボレーションの全貌も見ることができる。
なお会期中には、計良によるヘアメイクライブや滞在制作も開催。既存のジャンルを越え、ヘアメイクの可能性に挑む計良の仕事を会場で目撃したい。