音を用いた表現の第一人者として知られる小杉武久が、2018年に食道がんのため他界した。東京芸術大学在学中より即興演奏を始め、1960年には「グループ・音楽」を共同結成し、集団即興演奏を試みた小杉。60年代半ばにはニューヨークに滞在し、芸術集団「フルクサス」にも参加した。
その後も武満徹、一柳慧との「Collective Music」や、即興演奏集団「タージ・マハル旅行団」を結成するなど、即興演奏を中心とした活動を経て、77年にアメリカへ移住。マース・カニングハム舞踊団の専属音楽家に就任し、95年より音楽監督を務めたほか、バイオリン演奏や電子テクノロジーを駆使した表現も行い、世界各地の芸術祭への参加や、美術館、ギャラリーでのサウンド・インスタレーション作品の発表など幅広く活躍した。
80歳でその生涯を終えるまで独自の音楽観を貫いた小杉だが、活動の中心が欧米であったため、国内でその演奏や作品に接する機会は限られていた。よって日本国内よりも海外での評価がきわめて高かったことは、『ニューヨーク・タイムズ』誌に掲載されたニール・ガンスリンガーによる追悼記事の反響からもうかがえる。
そんな小杉の50年以上にわたる活動の一端を紹介する「小杉武久の2019」が開催される。本企画は、埼玉県深谷市と東京都渋谷区での3会場を舞台に、「演奏」「展示」「映像上映」の切り口による4プログラムで構成。時代の趨勢とは関係なく、独自の表現活動を展開してきた小杉の作品世界を堪能できる機会となる。