フランス出身のデザイナーであり建築家、シャルロット・ペリアン(1903~99)をご存知だろうか。ペリアンは19世紀から20世紀の大きな価値観の転換のなかで多彩な作品を残し、日本と大きな関わりがあったことでも知られている。
そんなペリアンの没後20周年を記念する回顧展が、フランス・パリのフォンダシオン ルイ•ヴィトンで開催される。本展では女性の役割、そして社会と自然の関係を問うペリアンの建築作品にフォーカス。時代と作品の流れを追って、新しいアール・ド・ヴィーヴル(豊かなライフスタイル)の世界を体験することができる。
1927年、ペリアンはル・コルビュジエとその従兄であるピエール・ジャンヌレのアトリエに入所。3名で《シェーズ・ロング(寝椅子)》《グランコンフォール》などのアイコン的なインテリアをサロン・ドートンヌ発表し、一躍脚光を浴びた。
その後の40年、ペリアンは坂倉準三の推薦により日本の輸出工芸指導の装飾美術顧問として来日。竹などの伝統的な素材を使って生活空間を再構築するマニフェスト「選擇、傳統、創造」を発表し、多くの日本人デザイナーに影響を与えた。
そして第二次世界大戦時の「パリの解放」の後、ペリアンはパリ国際大学都市の学生寮をはじめとする作品で最小限の空間と家具や建築、芸術が密接な関係にあることにアプローチ。マルセイユの集合住宅「ユニテ・ダビタシオン」のためにデザインされたオープンキッチンなども、ペリアンが生活空間に持ち込もうとした詩的な機能を象徴している。
こうした芸術と建築の密接な関係は、55年に東京で開催された「芸術の綜合への提案―コルビュジエ、レジェ、ペリアン3人展」でかたちを得る。ペリアンは同展のためにコルビュジエやフェルナン・レジェ、ピエール・ スーラージュらを呼び集め、絵画やタペストリーと家具、建築を組み合わせたデザインを発表した。
本展ではこうしたプロジェクトのほかにも、ポンピドゥー・センターの家具と備品(1965)やフランス・サヴォア県のスキーリゾートにつくられた《シャルロット・ペリアンの山小屋》(1930)、パリのユネスコ庭園につくられた《茶室》(1993)など、晩年の作品までを紹介。モダニティを具現化しようとしたペリアンの作品は、生活に対する新たな視点とアイデアを与えてくれることだろう。