遊び心あふれる形状を色鮮やかなキャンバスに包んだ作品で知られるジョシュ・スパーリングは、1984年アメリカ・ニューヨーク州オネオンタ生まれ。現在は同州イサカを拠点としている。
合板が入り組んだシェイプト・キャンバスを支持体とするスパーリングの作品は、通常の絵画とは異なり、絵画と彫刻、イメージとオブジェクトの境界線をぼかすような立体的な絵画だ。一連の作品群は、60~70年代のミニマル・アートや家具デザインから受けた影響にもとづいて制作される。
ニューヨークの郊外というアートの中心から少し外れた地で育ったスパーリングは、デザイナーのエットレ・ソットサスが81年に開始した建築ムーブメント「メンフィス・グループ」を受けている。同グループは、アールデコとポップ・アートからインスピレーションを得て、カラフルで抽象的な装飾と非対称的な形状をあしらったデザインを数多く残している。
スパーリングの制作は、グラフィックデザインのソフトウェアを用いてデジタルのなかで積み重なった形状を抽出する作業からスタート。それらの形状を合板からハイテク自動ルータでくり抜き、帯状のキャンバスを張り、表面はあえて伝統的な手作業で色付けしていくという。
今回、スパーリングの日本初個展「Summertime」が、六本木のペロタン東京で開催される。本展は2部構成。スペースごとにスパーリングのプラクティスに見られる異なる視覚的アプローチや構図を取り上げ、美術史上のムーブメントから、より大衆的なポストモダニストの形状表現にまでおよぶスパーリングの関心を統合する内容となる。
メインスペースでは室内の全垂直面がくねくねとした線状で覆われた没入型インスタレーションを楽しむことができる。2つめのスペースでは、シェイプトならびにカラー・キャンバスの集合体「コンポジット(複合パネル)」を壁面に整列させ、バウハウスとおもちゃの家を足して2で割ったような空間になるという。
モダンなデザインや構図的試みというエトス、そしてポストモダン的様式への支持を想起させる同作で、スパーリングはパネルとパネルの接合箇所にグラフィックによってひび割れの描写を取り入れ、各表面の色を混ぜ合わせることで透明感覚を生み出すことを試みる。