小林正人は1957年東京生まれ、84年に東京藝術大学美術学部油画専攻を卒業。97年、キュレーターのヤン・フートに招かれてベルギーを拠点に活動後、2006年に帰国。主な個展に「Thrice Upon A Time」 (シュウゴアーツ、2016)、「ART TODAY 2012 弁明の絵画と⼩林正⼈」(セゾン現代美術館、2012)、「この星の絵の具」(⾼梁市成⽻美術館、2009)などがある。
90年代から長方形の枠を飛び出してキャンバスを張りながら手で描くなど、自由な絵画のための方法論を生み出してきた小林。昨年12月には、ひとりの青年が絵画と出会い、画家として成長していく姿を描いた自伝3部作『この星の絵の具』の上巻をアートダイバーから刊行した。
そんな小林による今回の個展タイトルは「画家とモデル」。高校時代、愛する人物を描くために芸術の世界に足を踏み入れた小林にとって、モデルは創造の根源的な動機であり、共同制作者として重要な存在だ。
小林は本展で、17年から制作を始めた新作を発表。後ろ向きに横たわり背中から心臓を打ち抜かれたモデルと、筆をくわえた馬としての画家の姿がそれぞれ描かれる。両者の関係は謎に満ちたものだが、そこには現実と画を生き抜き、美を結実させる画家の姿勢を感じることができるだろう。小林が「この星に捧げる」新作に、期待が高まる。