自由で開放された絵画のあり方を追求し、作品を直接手で描くなどの様々な手法で絵画を生み出してきたアーティスト・小林正人。その小林による自伝的小説3部作『この星の絵の具』の上巻『この星の絵の具[上]一橋大学の木の下で』がアートダイバーより刊行された。
小林は1957年東京都生まれ。84年に東京藝術大学美術学部油画専攻を卒業。96年には第22回サンパウロ・ビエンナーレ日本代表となり、97年にキュレーター、ヤン・フートの招きによりベルギー・ゲントを拠点に各地で制作を行った後、2006年に帰国。現在は広島県福山市を拠点に活動を続けている。
本作は、ヤン・フートに才能を認められ、国際デビューを果たす直前までの国立時代を著した「青春編」。小林が絵を初めて描くきっかけとなった「せんせい」との出会い、85年の初めての個展、東京・国立のアトリエでの制作の日々が小林独自の瑞々しい文体によって綴られている。
1980〜90年代にかけて描かれた《天使=絵画》《絵画=空》《天窓》《絵画の子》といった初期の傑作はどうのようにして生まれたのか。そして小林にとって絵画とはなんのか。
初期作品のカラー図版も収録されており、小林正人の芸術を知るためのコンセプチュアル・ブックとしても読むことができる一冊だ。