「人は死んだらどこへ行くのか?」とは、多くの人が抱いたことがある疑問だろう。横尾忠則(1936〜)もまた、「死後の世界」のあり方に関心を持ち続け、グラフィックデザイナー時代から現在にいたるまで、様々な「死」のイメージを作品に投影してきた。
『神曲』のなかで、主人公ダンテは、生きながらにしてあの世へと迷い込み、地獄、煉獄、天国の光景を目にする。横尾は1970年、この『神曲』のイメージを重ねたヌード写真を、雑誌『平凡パンチ』上で発表したほか、96年から始まる「赤」の絵画シリーズでは、空襲で真っ赤に染まった夜空をもとに、此岸と彼岸、日常と異界を表現。さらに、最新作となる女性のポートレート・シリーズにおいては、顔の一部をオブジェで覆い隠された女性たちを、実体のない奇妙な存在として描いた。
つねに死後の世界を想像し、「死の側から生を見」てきた横尾忠則。本展は、こうした横尾のまなざしを、作品をとおして追体験する場となるだろう。