正しくは、想像するしかない。人間の知覚の可能性を問う菅俊一による個展をチェック

これまで、人間の知覚能力にもとづく新たな表現の研究・開発を行ってきた映像作家の菅俊一。その個展「正しくは、想像するしかない。」が、松屋銀座7階のデザインギャラリー1953で開催されている。会期は4月15日まで。

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 菅俊一は1980年生まれの研究者・映像作家。現在、多摩美術大学美術学部統合デザイン学科専任講師。人間の知覚能力にもとづく新しい表現の研究・開発を行い、様々なメディアを用いて社会に提案することを活動の主軸としてきた。

 これまで、NHK Eテレの番組『0655』『2355』のID映像を手がけたほか、21_21 DESIGN SIGHTで開催された「単位展」(2015)のコンセプトリサーチ、「アスリート展」(2017)の展示ディレクターなどを担当。また、2017年には菅が日常で行ってきた53の「観察」をまとめた単著『観察の練習』(NUMABOOKS)を刊行した。

菅俊一

 そして今回開催されるのが、菅の個展「正しくは、想像するしかない。」だ。本展は、「線の質感・表現を変えるだけで『透過』の感覚をつくり出す試み」「ディスプレイや紙に描かれた顔の視線同士をつないで空間に線を描く試み」「これまで目にしてきた情報を手がかりに、その後どうなるかを想像させる試み」の3つのテーマによって構成される。

 菅は2017年、展覧会タイトルと同名の書籍を制作。同書の左ページにはトングで掴んだ角砂糖が、右ページにはコーヒーカップが描かれ、読者がページをめくることによって「角砂糖をカップに入れる」という変化を頭のなかにつくり出す、あるいはそうした変化を想像できるということを表現している。

菅俊一

 菅は本展に寄せて、「ここに並んでいるのは手がかりだけです。正しいイメージを作りだすには、鑑賞しているみなさんの想像力を使うしかないのです」とコメント。普段何気なく行っている「見る」という行為を支えている私たちの知覚、そして物事に対する認知の変化を、空間全体で体験してみたい。

編集部

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