EXHIBITIONS

平田晃久―人間の波打ちぎわ

2024.07.28 - 09.23

Taipei Roofs 2017 ©Dean Cheng

 練馬区立美術館で「平田晃久―人間の波打ちぎわ」が開催されている。

 本展では、建築家・平田晃久の建築世界を紹介。「建築とは『からまりしろ』をつくることである」というコンセプトは、平田の建築に一貫している。平田の造語である「からまりしろ」とは、はっきりと形づくられる空間領域とは異なり、「ふわふわとした隙間の錯綜」、つまりはあらゆる物質の傍らとも言える領域の重なりを指す。それは人間世界に限ったことではなく、植物、動物、異なる時空の文化なども含んだ広義での生命体との共有可能性を探る試みでもあり、人間が狭い意味での「人間」から自由になる未来に向けた試みでもある。

 平田のコンセプトが形となった公共建築としては、2022年に日本建築学会賞を受賞した「太田市美術館・図書館」(2017)が代表されるが、区切られた空間や内と外が絡まりあう「からまりしろ」を実現した地域のランドマークとして市民に愛されている。また、複数の住居や商業施設なども手がけ、平田の哲学的理論と自然や生命への憧憬が反映された独創性溢れる空間を現出している。

 今回、これらの代表的な建築作品群に、練馬区立美術館も新しく加わることとなった。平田によると図書館と一体化し、融合する新生美術館の建築コンセプトは、「21世紀の富士塚 / アートの雲 / 本の山」。練馬に古くから存在する「富士塚」をテーマに、「美術と本」を街や人々とつなぐ場として構想。同館は、約40年にわたる歩みを継承しつつも、このコンセプトのもと新しい局面を迎えることとなる。

 本展では、これまでの平田建築から新しい練馬区立美術館をはじめ、現在進行中のプロジェクト、そして未来への展望を踏まえて紹介。現代建築を代表する建築家・平田晃久の世界観に触れてみてほしい。