果実や寝具、器などをモチーフに、静謐で写実的な絵画を手がけてきた画家・伊庭靖子。その個展「伊庭靖子展 まなざしのあわい」が、東京都美術館で開催される。
伊庭は1967年生まれ、90年に嵯峨美術短期大学版画科専攻科を修了。最近の個展に「Paintings」(MISA SHIN GALLERY、2017)、「伊庭靖子展」(MA2 Gallery、2018)などがある。美術館での個展は「伊庭靖子―まばゆさの在処―」(神奈川県立近代美術館、2009)以来、10年ぶりの開催となる。
自ら撮影した写真をもとに、触れたくなるようなモチーフの質感や、それがまとう光を描く伊庭。近年はそれまで接近していたモチーフとの距離を広げ、空間や風景を含めて画面を構成するという新たな展開を見せている。
伊庭は本展のために約3年の時間をかけて準備を行い、新作を中心に展示する。今回は、東京都美術館で撮影した写真から生み出された絵画も出展。建築家・前川國男がつくり上げた独特の空間に漂う光は、伊庭のレンズと手を通して生まれ変わる。
また絵画、版画に加えて発表されるのが、伊庭にとって初の試みとなる映像作品だ。今回は、人の眼と見る対象との間にある光、大気、雰囲気に対する伊庭の一貫した関心を垣間見ることができる、立体視を用いた作品が予定されているという。
伊庭の作品は、国内外の主要美術館に所蔵されるほか、多くのコレクターに愛されてきた。本展では所蔵者の協力のもと、近作や新作につながる2004年からの作品を展示。伊庭の表現の変遷をたどるとともに、作品1点1点との対話を楽しみたい。