過去3年にわたり、東京、ヴェネツィア、ミュンヘン、そして北京のエスパス ルイ・ヴィトンにて、様々なアーティストの未公開のコレクションを展示してきたフォンダシオン ルイ・ヴィトンのキュレーションによる「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラム。同プログラムでは、国際的なプロジェクトを通じてその活動を広く一般に公開してきたフォンダシオンの意向を、展覧会というかたちで実現している。
その第6弾として、ヘスス・ラファエル・ソト(1923~2005)の個展が、表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京で開催中だ。本展では、フォンダシオン ルイ・ヴィトン所蔵のコレクションから、ソトの象徴的作品である《Pénétrable BBL Bleu》(1999)を見ることができる。
ソトは1923年ベネズエラ出身。42~47年にかけてカラカスの造形美術学校で学んだのち、50年までベネズエラ・マラカイボの美術学校で校長を務めた。パリに移住後は、ヤコブ・アガムやジャン・ティンゲリー、ヴィクトル・ヴァザルリなどと関係するアーティストやヌーヴォー・レアリストたちとの交流を深めた。
55年には、キネティック・アートの誕生に繋がったとされるニューヨークのギャルリー・ドゥニーズ・ルネでの展覧会「Le Mouvement(運動)」に参加。この頃より、ソトの芸術形態は幾何学的と有機的のあいだを行き来し、57年頃は動作を重要視した抽象的な作品に傾くが、その後65年には幾何学的な作品を確立させた。
本展でも展示されるソトの代表シリーズ「Pénétrable」は、没入型インスタレーションだ。同シリーズは、PVC素材(ポリ塩化ビニル)を用いた何百もの細い垂直な棒を空間に吊り下げた集合体で構成され、「知覚可能な空間の顕現」とソト自ら形容したように、数多くのバージョンを生むなかで、音(聴覚)を含む様々な知覚的体験が盛り込まれた。
本展で、鑑賞者は展示空間を覆う壮大なインスタレーション作品《Pénétrable BBL Bleu》(1999)の中を通り抜けることで、美しい青の集合体の動的かつ視覚的な作用に没入することができる。空間が空虚な場所ではないことを人々に思い出させ、実際に素材に触れる体験によって、目に見えないものを感じさせる同作をぜひ体験してほしい。