長谷川利行(1891〜1940)は京都・山科生まれの画家。昭和初期の、モダンな東京の喧騒や、内面に寄り添うような人物像などを、自由奔放な筆致と明るい色彩によって描き出した。その画風や、波乱に満ちた生涯から、「日本のゴッホ」とも呼ばれる。
青春時代を文学に傾倒し過ごした利行は、30歳頃になると画家を志し上京。独自に技法を体得し、30代半ばには二科展や一九三〇年協会展などで受賞を重ねるなど、その才能を開花させた。
熱狂的な支持者やコレクターを生んだその作品は、靉光や井上長三郎、吉井忠ら池袋モンパルナスの作家たちにも大きな影響を与えた。しかし、放浪癖と酒癖で生活は破綻し、浅草、上野、新宿、銀座など各地を転々とする生活のなか、病に倒れ49歳の生涯を終える。
利行の没後70余年を過ぎるが、未だその生涯の把握、評価が半ばということもあり、近年でも新たに作品が発見されることがある。本展では、その新発見となった《カフェ・パウリスタ》や《水泳場》といった大作を含む、油彩、水彩、素描、ガラス絵など、約140点の作品を紹介。その画業を通して、「生きること」「描くこと」の原点を見つめ直す。