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画家ゴッホを世界に広めたヨーというひとりの女性。原田マハ(作家)×大橋菜都子(東京都美術館学芸員)対談【6/6ページ】

編集部から質問

ーー「女性だからこそ強く生きた」という点についてもう少し詳しく伺わせてください。ヨーは、当時立場が弱かったはずの「女性」でありながら、ここまでフィンセントを世に広めることに尽力できた理由はなんだと思いますか?

原田 やはり母であったことは強度を増した理由だと思いますが、ただその役割以上に「女性」としての強さ、というものも彼女は強く持っていたような気がします。女性というのは、本能的に命を育む性です。その点で、女性には男性とは違う強さがあるのだと私は思います。ヨーは、とくにその生命を育むという強さを非常に強く持った人だった。そしてアートや文学を愛するという人間の知的な部分を育んでいくことにも、非常に力を注いだ人だったのだと思います。

 そんなヨーをはじめとしたファン・ゴッホ家の家族が、いかにしてゴッホという画家の伝説を支え、また守り「つないで」きたのかということは、この時代にこそ知られるべきことだと思います。ファミリーが結束してアートを次の世代に伝えていくという点に着目した展覧会を、今やることに意義を感じます。

大橋 今回展覧会では、ヨーをはじめとした家族が守り受け継いできた作品を、実際にご覧いただくことができます。

 フィンセントはどうしても孤高の人というイメージが、とくに日本だと強くあると思うのですが、じつは家族がこんなにもいて、時代を超えてつないできたのだということに気づいていただく機会をつくれたらと。

原田 分断や断絶ではなく、継続してつないでいくために戦った人たちがいたということ。 私たち人類は、お互いを支え合って思いやり、文化や芸術を次の世代に伝えていくことにこそ、力を注がなくてはいけない。そんなことを伝えてくれる展覧会になると期待しております。

編集部