美術とは無縁だったヨーの、愛書家としての一面
大橋 たしかに、ようやくヨーにも光が当てられるようになったと感じます。21世紀になるタイミングから、ヨーとテオの手紙のやり取りの出版や、日記の公開も進んできて、そしてついに今回この本が出版されました。今回この本のなかで、ヨーに関する印象的なエピソードがあれば教えてください。
原田 彼女はとても知的な人ですが、その背景には本をたくさん読んでいたことが挙げられると思います。生涯を通して読書が彼女の人生の喜びだったようで、さらに彼女自身、一時期は作家になりたいという願望を持つぐらい、文章を書くのも好きだったということが印象的でした。
彼女はいろんな情報を読書から吸収できる人で、だからこそ、フィンセントからテオやヨーに宛てた手紙にある文学的な素養や魅力に気がつくことができた。身をもってその才能に気づいたことが、一時は狂気の画家だとまでいわれた義理の兄を、肯定する理由になったのだと思います。
大橋 じつはゴッホ自身も愛書家で、小さい頃からたくさん本を読んでいたことも、何か2人に通じるものがあるのかもしれません。どちらも本から得たものが大きいのだと感じます。
ただそのうえで私は、ヨーは本や文章のほかに、音楽についても素養はあったようなのですが、実は美術とはほとんど無縁の世界で育ったというのが驚きでした。美術との接点でいうと、本当にテオと暮らした1年半の間くらいだったようです。それにも関わらず、当時まだ評価が定まっていなかった新しいアートをいいと信じて、広めていこうと考えたのは改めてすごいことだと思います。




















