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ジャパン・ソサエティー(JS)ギャラリーの新たな展開。新ディレクターが見据える未来

今年2月、ニューヨークのジャパン・ソサエティー(JS)ギャラリーに新たなディレクターとして就任したミシェル・バンブリング博士。これまで米国で日本の伝統文化や近現代の視覚芸術、建築、デザインなどを紹介し、国際交流において重要な役割を担ってきた同ギャラリーをどうリードしていくのか、今年5月に来日したバンブリング氏にインタビューを行った。

聞き手・文=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)

ジャパン・ソサエティー(JS)の内部 © Go Sugimoto. Courtesy of Japan Society

 1907、ニューヨークに設立されたジャパン・ソサエティー(JS)。そのギャラリーの新ディレクターとして就任したのは、日本文化に対して深い情熱を持つミシェル・バンブリング博士だ。

 10歳まで東京で育ち、日本の人間国宝や伝統芸術に魅了されるバンブリング氏は、新たなディレクターとして日本の伝統文化を現代の文脈で再解釈し、新たな視点を持ち込むことに取り組んでいる。例えば、その最初の展覧会として予定されているのは、イラストレーター・マンガ家であるAcky Brightの米国初の展覧会。また、文楽の舞台裏を紹介しながら、田村友一郎や杉本博司などの現代美術家の作品を組み合わせる意欲的な試みも企画している。

 今後は、来年の第二次世界大戦80周年を記念して塩田千春の大規模個展や、2028年の手塚治虫の生誕100周年を記念する展覧会なども予定。これらの取り組みにより、鑑賞者に伝統と現代が交差する瞬間を体験させるとともに、若い世代にも日本の伝統文化にふれる機会を提供することを目指している。

 今回のインタビューでは、バンブリング氏のこれまでの日本美術との旅や、ジャパン・ソサエティー・ギャラリーへの抱負、そして今後5年間にわたるビジョンについて話を聞いた。彼女が同ギャラリーにどのような変革をもたらすのか、そしてその影響が日本と米国、さらには世界にどのように広がっていくのか、期待が高まる。

ミシェル・バンブリング

生涯にわたる日本美術の道のり

──日本美術に関するあなたの道のりや、それがどのようにジャパン・ソサエティー・ギャラリーのシニア・ディレクターへの就任につながったかを教えてください。

 日本美術との旅は、人生を通じて続いてきました。私の祖先は明治時代に日本でパントマイム、バレエ、アクロバットを披露していました。祖母は戦後、生け花コンテストで受賞し、それにより京都に行く機会を得ました。父は東京で働いており、私は10歳まで東京で育ちました。

 大学3年次には立教大学で留学し、四国の友人の家を訪れた際に、文楽劇場の人形の頭を彫る人間国宝、四代目 大江巳之助(1907〜1997)と出会いました。大学卒業後、トーマス・J・ワトソン・フェローシップのおかげで、40人近くの人間国宝に出会い、彼らの作品に込められた「心」と「精神」について尋ねることができました。テープに録音された彼らの声や、私の手記に彼らが書き込んでくれた美的理想を表現する漢字は、日本の伝統がどのようにして持続しているかを反映した具体的な証です。

 その後、コロンビア大学で村瀬実恵子先生の指導のもと、日本美術史の博士課程に進学しました。また、慶應義塾大学で河合正朝先生の指導を受けながら、博士論文のテーマとして金剛寺にある室町時代の謎めいた日月山水図屏風について研究しました。そして、メトロポリタン美術館のジェーン・アンド・モーガン・ホイットニー・フェローとして、江戸時代の金・銀・雲母を使った絵画を研究しました。

 私の日本美術との旅は、日本や米国を超えてイタリア、さらにはアラブ首長国連邦へと広がり、アブダビのザイード大学とニューヨーク大学で日本美術史とキュレーションの実践を教えました。海外での20年間の仕事は、日本美術に対するグローバルな視点を私に与えてくれました。

ジャパン・ソサエティーの外観 © Japan Society

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