EXHIBITIONS

棚田康司展「入って飛ぶ」

棚田康司 宙を取り込むように 2023

棚田康司 地上を取り込むように 2023

 ミヅマアートギャラリーで、棚田康司の個展「入って飛ぶ」が開催されている。

 棚田は第30回平櫛田中賞の受賞を受けて2023年10〜11月に岡山県・井原市平櫛田中美術館で開催された個展「線上に幅を 空間に愛を」において、二体の新作《地上を取り込むように》《宙を取り込むように》を発表した。

 境界線がはっきりすればするほど、矛盾や齟齬や軋轢が生まれ、色濃く分断していく。そんな世界の様子を目の当たりしながら、棚田はこの二体の像を彫り上げた。境界線上に彫刻を存在させ、その線の幅を広げ空間に余地を持たせることで多様な見方が生まれていく。

 異なる思想や文化のなかで、他者に理解を示し受け入れていくこと、そして既存の価値観や制約から解き放たれて、自分を越えていくこと。それは、棚田自身が30年にわたる創作活動を通して追求し続けてきた「人間の本質とは何か」という問いに対し、自らが作品というかたちで差し出したひとつの導きなのかもしれない。

 本展では、この二体の作品を中心に、本展のための新作や、90年代に制作された作品などを紹介する。不穏な空気に包まれながら不安や緊張を強いられる時代のなかで、境界線を跨ぎ、そこに広がる空間を共有したとき、そこからどんな世界が見えるのかを体感できる展示になっている。