2018.7.8

彫刻家・棚田康司の個展「全裸と布」がミヅマアートギャラリーで開催。
新境地となる力強い裸婦像を発表

彫刻家・棚田康司の個展「全裸と布」がミヅマアートギャラリーで開催される。これまで少年や少女の彫刻を手がけてきた棚田の新境地となる裸婦像の新作が発表される。会期は8月1日〜9月1日。

棚田康司 h143の女性像 2018 撮影:宮島径 ©TANADA Koji Courtesy Mizuma Art Gallery
前へ
次へ

 棚田康司は1968年兵庫県生まれ。93年に東京造形大学造形学部美術学科Ⅱ類(彫刻)卒業後、95年に東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。以後、彫刻家として活動し、2001年には文化庁芸術家在外研修員として7ヶ月ベルリンに滞在したほか、16年にはインドネシア・バンドゥンに2ヶ月、シンガポールに1ヶ月滞在制作をしている。

 これまで少年少女の像を掘り続けてきた棚田。成熟と未熟、聖性と俗性、上昇と下降など、その境界線に存在することによって、無限に広がっていく可能性や領域を、作品と対峙する鑑賞者へ提示してきた。

 そんな棚田は、17年夏に伊丹市立美術館にて開催されたO JUNとの二人展「鬩(せめぐ)」において、彫刻家と画家という異なるアプローチでの表現という課題に向き合った。互いの少年像を表現し、同一のモデルを題材にした作品制作、空間を共有した公開制作など、作家間の一騎打ちともいえるこの展覧会によって、棚田は自分自身と向き合う機会になったという。

 それから1年が経過し、ミヅマアートギャラリーで開催される棚田の個展「全裸と布」。本展で発表される新作は、一見これまでの棚田作品にみられた少年少女像とは異なる、力強さをたたえた裸婦像だ。

棚田康司 h143の女性像 2018
撮影:宮島径 ©TANADA Koji Courtesy Mizuma Art Gallery

 重力に抗うようにわずかに上を向いた顎先や、未知に構えるように力が入った足の指先。細部に張り巡らされた緊張感と同時に、母性のような慈しみや温もりが、微妙な均衡を保ちながら存在している。

 木の塊から棚田が彫り出すことによってたくましく立ち現れた女性像は、作家の新境地となるだろう。