EXHIBITIONS

特別展 「日本画に挑んだ精鋭たち ―菱田春草、上村松園、川端龍子から松尾敏男へ―」

2023.07.29 - 09.24

上村松園 牡丹雪 1944 山種美術館

山口蓬春 卓上 1952 山種美術館 ⓒ公益財団法人 JR東海生涯学習財団

下村観山 不動明王 1904 山種美術館

 山種美術館で特別展 「日本画に挑んだ精鋭たち ―菱田春草、上村松園、川端龍子から松尾敏男へ―」が開催されている。

 本展覧会では、明治時代から現代にいたるまで、日本画の創造に挑み続けた精鋭たちの作品を揃え、その軌跡をたどる展覧会となっている。

 明治時代に入り社会の近代化が進むなか、西洋画に匹敵、あるいは凌駕する日本の絵画を生み出そうと、画家たちは模索を続けてきた。横山大観や菱田春草たちは、日本美術の伝統に西洋の表現を取り入れ、創設されたばかりの日本美術院(院展)で実験的な試みを行うことで、日本画に新たな局面を切り開いていった。

 さらに、大正・昭和時代を迎えると、政府主導の官展、および日本画壇の中心にいた院展に対抗しようとする画家たちが登場するようになった。 土田麦僊、小野竹喬たちは「国画創作協会」、川端龍子は「青龍社」を在野の絵画団体として立ち上げた。

 戦後には敗戦の影響もあり、既存の日本画に対する価値観が社会的に問い直され「日本画滅亡論」が唱えられるようになったが、そのなかでも日本画家たちは様々な表現や技法の探究を重ねた。

 このような時期を経て、新たな創造に努める若い画家たちを支援するため設立されたのが山種美術館賞だ。松尾敏男、岡村桂三郎をはじめ、山種美術館賞は後に画壇を代表する画家たちの登竜門的な賞となった。

 本展では、輪郭線を使わない技法「朦朧体」で空気の表現に努めた菱田春草の《雨後》、女性が画家として生きる道を切り開いた上村松園の《牡丹雪》、希少な岩絵具の群青を多用して記念すべき展覧会(第1回青龍展)へ出品した川端龍子の《鳴門》、 若い頃「日本画滅亡論」に直面するも日本を代表する画家となった松尾敏男の《翔》 (山種美術館賞受賞作)などを紹介する。

 ※文中の作品はすべて山種美術館所蔵。