日本画の魅力をTikTokで発信する〜寺田倉庫の試み〜

近年、美術館だけでなく、アートを扱うショップやギャラリーなどもTikTokを活用し、新しいファン層に発信を始めている。そのひとつが、芸術文化発信事業に力を入れている寺田倉庫。去る4月11日には寺田倉庫株式会社が運営するPIGMENT TOKYOからTikTok LIVEを実施、多くのコメントを得るなど好評を博した(PR)。

文=浦島茂世

PIGMENT TOKYO

 寺田倉庫が「@terrada_artproject」のアカウントでTikTokで発信を始めたのは今年の3月。自社で運営するコレクターズミュージアム「WHAT」、アートギャラリーカフェ「WHAT CAFE」、そして伝統画材ラボ「PIGMENT TOKYO」の3つの施設による共同アカウントだ。それぞれの施設がピックアップしたアーティストの紹介や、絵を描くうえでのちょっとしたテクニック情報、寺田倉庫の本拠地である天王洲アイルの街情報など、バラエティ豊かにアートに関する情報を発信している。

 4月11日に開催されたTikTok LIVEは、「岩絵具を使って桜を描こう #TikTokに春が来た」と銘打ったもので、伝統画材ラボPIGMENT TOKYOから届けられた。PIGMENT TOKYOは、日本画をはじめとした、古今東西の希少且つ良質な画材を取り揃えた複合クリエイティブ機関。顔料や膠(にかわ)などの画材販売はもちろん、希少価値の高い硯や筆などを資料として収集、保管、展示するなど博物館的な機能も担っている。週末は、水彩絵具作りや岩絵具、箔などを使った体験ができるワークショップを開催し、知識の共有と伝承を行っている。

 多くの視聴者が最初に称賛のコメントを寄せたのは、洗練された館内の設え。建築家の隈研吾が手掛けた内装は、壁一面に色鮮やかな約4500色の顔料の瓶が並ぶ。すべての顔料が量り売りで購入できるそうで、絵画を制作するひとだけでなく、プラモデル製作者、デザイナーなど色を仕事にするひとなども顧客となっているそうだ。

 TikTok LIVEの進行はPIGMENT TOKYOのスタッフ、芹澤マルガリータと山里奈津実が担当。二人をはじめPIGMENT TOKYOのスタッフは全員が作家としても活動している。今回のライブも、二人の豊富な経験に基づいたわかりやすい解説もあり、視聴者は活発にコメントを寄せていた。

 約60分間のLIVEではまず、PIGMENT TOKYOの店内を紹介。視聴者があまり知らない日本画やアートにまつわる「染料と顔料の違い」や、「膠(にかわ)」など、美術に馴染みのない用語について、わかりやすいよう解説を交えながら、回遊していると視聴者から多数の質問が寄せられた。

 続いては、メインイベントであるライブペイントの実施。PIGMENT TOKYOで扱う顔料を使い、あらかじめ用意された桜の絵に着彩していく。岩絵具と膠の配合割合や、指で練っていくことなど、プロセスごとに丁寧な解説が加えられると、視聴者は「知らなかった」「日本画はどこで習えるの?」のコメントを連発。徐々に色づいていく絵を見て、質問も多く飛び出した。

 今回のTikTokライブは、TikTokのプッシュ通知経由で視聴したユーザーも多かったようだ。それゆえに、ライブ開始から最後まで店舗の名称や場所などの質問が相次いだほか、「市販の絵具しか使ったことがないので使ってみたい」「絵は描かないが、色に興味があるので見ているだけでも楽しい」などの、フレッシュなコメントも多く見られた。また、「訪問してみたい」と具体的な行動を示唆するコメントも寄せられており、従来のファン層ではないユーザーに、日本画の魅力を伝えることができたLIVEとなったようだ。

 このTikTok LIVEを行った寺田倉庫のスタッフは「昨今の情勢により、アート施設に足を運べない方々にも配信を通じて楽しんでいただけたらと思い、TikTok LIVEに挑戦しました。LIVEでは、視聴者の方々からリアルタイムで多くのコメントをいただき、会話を楽しみながら配信をすることができました。今後もTikTokを通じて、アート好きの方々と出会えることを楽しみにしています」と語り、TikTokユーザーの熱い反応に、手応えを感じていた。

 また、完成した桜の絵の作品もTikTokに投稿されており、LIVEを見逃したユーザーも確認することができる。

 今回、寺田倉庫がTikTok LIVEを行ったのは、新生活や春を楽しむための特別キャンペーン企画「#TikTokに春が来た」の一環。TikTokでは今後も季節やイベントに合わせた特別企画や、国境を超えたプロジェクト企画などを続々と開催していく予定。5月中旬からは、世界各国の美術館も参加するプロジェクト「Museum Week」も行われる予定だ。

 今後とも、TikTokのアートに関するコンテンツの充実にさらなる期待が持てそうだ。

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