• HOME
  • MAGAZINE
  • SERIES
  • 有識者が選ぶ2024年の展覧会ベスト3:岩田智哉(The 5th Floor …

有識者が選ぶ2024年の展覧会ベスト3:岩田智哉(The 5th Floor ディレクター)

数多く開催された2024年の展覧会のなかから、有識者にそれぞれもっとも印象に残った、あるいは重要だと思う展覧会を3つ選んでもらった。今回はThe 5th Floor ディレクター・岩田智哉のテキストをお届けする。

「できごとども 五月女哲平、五月女政巳、五月女政平」展の展示風景より 写真=木暮伸也 提供=小山市立車屋美術館

「Jerūiyq: Journey Beyond the Horizon」(第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展カザフスタン館、ヴェネツィア海洋史博物館/2024年4月20日~11月24日)

展示風景より、セルゲイ・マスロフ《Baikonur-2》 撮影=筆者

 20世紀以降の飢饉や核実験の痕跡、枯渇が進むアラル海など、カザフスタンには西欧主導の近代化によるトラウマが残る。それを背景に、本展はカザフスタンの伝説で語られてきた理想郷である「Jerūiyq(約束の地)」という切り口から、1970年代から現在に至るまでのアーティストによるユートピアの表象を軸に、カザフスタンの美術史におけるひとつの視座の確立を試みる。同地および中央アジアにおける自然観やコスモロジーを参照した絵画、サウンド、インスタレーション、映像を通して、「脱植民地フューチャリズム(decolonial futurism)」のヴィジョンを提示する。規模や諸条件から参加作家の数は限られるが、今後の展開の可能性を示す意欲的な展覧会であった。

Exhibition Ranking