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ロンドンに誕生した新たな文化拠点。V&Aイーストが示す「若者とミュージアム」の関係とは【2/2ページ】

若者の関心をどう引きつけるか

 「JAプロジェクト」の設立者でディレクターのジェイデン・アリは、プレスリリースを通してこのように語っている。「V&Aイーストは、イーストロンドンの街並みや公共スペース、人々の創造性や自己表現など、この町の文化に深く根ざしています。店のファザードの照明やテキスタイルのディスプレイに至るまで、街のあらゆるものから直接インスピレーションを得て、そのリズムをそのままギャラリースペースに取り入れています。イーストロンドンに住むひとりとして、この博物館を地元コミュニティ、そしてより広い世界の人々に提供できることに誇りと責任を感じながら、人々を温かく迎え、多様な生き方を支え、誰もが自分の居場所となる博物館を目指しています」。

 また、V&Aイーストのディレクターであるガス・ケイスリー=ヘイフォードは、内覧会のなかで地域の若者たちとの対話について語った。「V&Aイーストの設立にあたって重要だったのは、地域の若者たちと直接対話して、彼らが何を求めているのかを理解することでした。彼らの多くは博物館に距離を感じていて、ほとんどは自発的に博物館に行くようなことはないとも話してくれました。そこで私たちは、100校以上の学校を訪れ、展示物を持参しながら対話を重ねました。その結果、彼らは自分たちの文化を反映し、そのストーリーを語ってくれる展示を求めていることがわかったのです」。

 ヘイフォードは続ける。「彼らはまた、自分たちの将来のキャリアについても真剣に考え、その多くはクリエイティブな仕事に関心を持っていました。しかしその糸口となるチャンスが身近にない若者たちも多く、私たちは彼らにどう助け船が出せるのか。そうして何万人もの若者たちの協力のもと、どうやったら彼らのニーズに応える博物館にできるかを考え続けていきました」。こうした取り組みは展示だけではなく、博物館内のカフェのメニューにも若者たちの声やアイデアが反映されているという。

アフリカ、アジア、中東などの様々な地域の味を巧みにミックスした料理で評判高いレストラン「ジコニ」による、館内のカフェ © Hufton+Crow

イギリスにおける黒人音楽の歴史をたどる

 こけら落としの特別展は「ザ・ミュージック・イズ・ブラック:ア・ブリティッシュ・ストーリー」だ。冒頭ではイギリスの奴隷貿易について触れながら、1900年から現在までの125年間に、黒人音楽がいかに英国文化を彩り、かたちづくられていったかを200点以上の展示品々を通して探る。ポスターや写真とともに、時代とジャンルごとのファッションも数多く展示されているのがV&Aらしい。この規模で黒人音楽を扱う展覧会はイギリスでは初めてだという。入場の際にはヘッドフォンが貸し出され、展示に合わせた音響サポートにより臨場感あふれる鑑賞ができる。

「ザ・ミュージック・イズ・ブラック:ア・ブリティッシュ・ストーリー」展の展示風景より、1950〜60年代に活躍したアーティストたちの写真が並ぶ 撮影=筆者

 本展のキュレーター、ジャクリーン・スプリンガーはプレスリリースで次のように述べている。「音楽は私たちの人生のサウンドトラックであり、団結のためのもっともパワフルなツールでもあります。本展では、抵抗と肯定、そして創造性の手段としての黒人音楽の豊かさと多様性を讃えながら、数々の人気のある音楽の物語を伝えていきます」。

 V&Aイーストは今後、ロンドンを訪れた際にぜひ立ち寄りたい新たな文化拠点のひとつになるだろう。

各階を結ぶ階段も特徴的である © Hufton+Crow

編集部