美術館の外へ──松山智一にとってのパブリック・アート
マンハッタンのハウストン・バワリー・ウォールにある壁画《Color Of The City》などのパブリック・アートを発表し続けてきた松山にとって、今回のプロジェクトは、自身の実践をあらためて見つめ直す機会でもあった。
「現代美術の作家がパブリック・アートをやるのは危険だ、という話をよく聞きますが、それはある種の責任放棄だと思っています。美術館の中だけで完結するのではなく、社会に向けてどう伝えるかが重要です」。
欧米では、オラファー・エリアソンやウルス・フィッシャーのように、公共空間でのプロジェクトを積極的に展開する作家も多い。表現のスケールや媒体を横断しながら、異なる観客層に向けて作品を届けることは、現代のアーティストに求められる役割のひとつだと松山は考えている。

「ニューヨークに来てから20年以上、特別な支援に頼ることなく活動を続けてこられたのは、この都市や社会が自分を受け入れ、表現の場を与え続けてくれたからだと思っています。そうした意味でも、パブリック・アートには今後も継続して取り組んでいきたい。社会と直接つながる場所で、自分の考えや表現を届けることができるのは、非常にやりがいのある活動だと感じています」。
都市のなかで立ち上がる3分間
タイムズスクエアでの上映が始まる深夜、現地では自然と人々が集まり、スマートフォンを手に作品を見つめる光景が広がる。上映が終わると、観客は再び街のなかへと散っていく。その一瞬の体験は、日常と非日常が交差する、巨大な都市ならではの時間だといえる。
「最初はなぜこんなに多くの人が集まっているのかわからなかったのですが、自分の作品を目当てに訪れているのだと気づいたとき、ニューヨークに来た意味を実感しました」。

世界の経済と文化の中心に位置するタイムズスクエアにおいて、アートが立ち上がる3分間。その限られた時間のなかで、《Morning Again》は都市の多層性と自由のあり方を問いかける。分断と共存、個と集合、表現と制約──そうした複数の緊張関係を抱え込んだタイムズスクエアという場において、パブリック・アートはいかにしてメッセージを成立させうるのか。本作には、その問いに向き合った松山の思考と実践が刻まれている。



















