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深夜3分間のみ、96以上のスクリーンに一斉上映。NYタイムズスクエアにて松山智一《Morning Again》が公開中【2/4ページ】

4つの自由とアリシア・キーズ、スウィズ・ビーツ、アレックス・コンサーニ、渡辺直美

 「Midnight Moment」は、2012年にTimes Square Artsによって開始されたパブリック・アートプログラムであり、タイムズスクエアの巨大ビルボードをキャンバスとして、現代アーティストによる映像作品を紹介してきた。これまでにデイヴィッド・ホックニーやオラファー・エリアソンをはじめ、100名以上のアーティストが参加し、都市空間とアートの関係を更新し続けている。

 松山による《Morning Again》は、3分間のアニメーション作品として構成される。作品にはそれぞれ「4つの自由」を象徴する人物が登場し、なかには松⼭の友⼈であるニューヨーク在住の実在⼈物も含まれている。

松山智一《Morning Again》(2026)より、アリシア・キーズがミューズとして描かれたシーン Photo by Michael Hull. Courtesy of Times Square Arts

 「『心の自由』ではアリシア・キーズを象徴的な存在として捉えています。彼女はニューヨークのヘルズキッチン出身で、何もないところから世界的な存在になった人物であり、その歩みのなかで培われてきた強さと包容力はまさに心の自由を体現していると思っています」。

スウィズ・ビーツをミューズに描いたシーン Photo by Michael Hull. Courtesy of Times Square Arts

 「『都市の自由』については、都市が波紋のように変化し続ける存在であるという認識のもと、スウィズ・ビーツをその象徴として位置づけています。彼はサウス・ブロンクスからキャリアをスタートし、音楽だけでなくビジネスの領域でも成功を収めてきた人物で、都市の変化とともに自身の可能性を拡張してきた存在だと考えています」。

中央のスクリーンに登場した人物はアレックス・コンサーニがミューズとなっている Photo by Michael Hull. Courtesy of Times Square Arts

 さらに、「性の自由」はトランスジェンダーモデルのアレックス・コンサーニ、「個の自由」は渡辺直美が代表されている。「ジェンダーや身体性を超えて、自分がありたい存在として生きること、あるいは身体を通して自由を表現すること。そうした多様なあり方を、それぞれの人物に託しました」と松山は語る。

中央のスクリーンに登場した人物は渡辺直美がミューズとなっている Photo by Michael Hull. Courtesy of Times Square Arts

 これらの人物は写実的な肖像として描かれるのではなく、松山の絵画的言語によって抽象化され、匿名性と個性のあいだを往還する存在として提示される。無数のスクリーンの中心にひとつの存在が立ち現れ、その周囲に価値や物語が拡張していく構造は、タイムズスクエアそのもののイメージとも重なり合う。

 「重要だったのは、彼らをたんなる広告的な存在としてではなく、それぞれが体現してきた経験や勇気を『ダイバーシティ』の一形態として捉え、それをタイムズスクエアという場所の言語に乗せてサンプリングすることでした。資本主義の象徴ともいえるこの場所で、その構造を引用しながら別のメッセージを提示したいと考えました」。

 世界中から人々が集まるタイムズスクエアにおいて、アートを発信することの意義について、松山は「この場所で作品を提示すること自体に大きな意味がある」と語る。本作は、都市の多層性とともに、現代における「自由」のあり方を問い直す試みとなっている。

編集部

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