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「クサマズ・ポップ」(草間彌生美術館)開幕レポート。草間彌生の「ポップ」を再考する【2/2ページ】

内面のビジョンと大型絵画の展開

 3階では、2000年代以降の大型絵画シリーズが中心となる。とりわけ「わが永遠の魂」シリーズは、約900点におよぶ連作として知られ、草間の内面から湧き上がるイメージを即興的に描き出したものだ。画面には水玉や網目、目などのモチーフが反復されつつ、鮮烈な色彩によって構成される。これらの作品は、一見するとポップ・アート的な視覚性を帯びながらも、引用やアイロニーとは異なる、内発的なエネルギーに満ちている。

3階の展示風景 © YAYOI KUSAMA
《天国へのぼった階段で見た宇宙の姿》(2021、部分) © YAYOI KUSAMA

 また本フロアでは、小型のミラールーム作品《天国へのぼった階段で見た宇宙の姿》(2021)も初公開されている。鏡面に囲まれた空間に無数の水玉が反射し、無限に広がる視覚体験を生み出すこの作品は、「反復」と「増殖」という草間の主題を身体的に体感させる装置として機能する。

日常と消費社会への接続

4階の展示風景より、iida「Art Editions YAYOI KUSAMA」(KDDI株式会社)の携帯電話。左から《ドッツ・オブセッション、水玉で幸福いっぱい》、《宇宙へ行くときのハンドバッグ》、《私の犬のリンリン》 © YAYOI KUSAMA
「黄樹リビングルーム」(2002)の展示風景 © YAYOI KUSAMA

 4階では、草間と日常生活、さらには消費社会との関係に焦点が当てられる。2009年にKDDI株式会社と協働した携帯電話プロジェクト「iida Art Editions YAYOI KUSAMA」では、作品のモチーフが日用品へと転化され、芸術と商品、メディアが交差する領域が提示された。さらに、「黄樹リビングルーム」と題された室内空間では、家具や布地を通じて草間の世界観が生活空間へと拡張される。

《明日咲く花》(2016)の展示風景 © YAYOI KUSAMA

 最上階では、花をモチーフとした大型彫刻《明日咲く花》(2016)が引き続き展示されている。強烈な色彩と大胆な構成は、空間の印象を一変させると同時に、草間の創作に通底するリズムと反復の構造を体現している。

 本展を通じて浮かび上がるのは、「ポップ」という言葉は必ずしも特定の美術動向に回収されるものではないということだ。それは、多くの人々に共有されうる視覚的・感覚的な経験であるということが、草間の作品からは伝わってくる。草間の作品は、外部の文化的文脈と個人的な内面世界とを往還しながら、独自の「ポップ」を形成してきた。その双方を取り上げながら、草間の「ポップ」の全体像を改めて提示する本展は、作家の表現の根源を再考する機会となるだろう。

編集部

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