渓谷の森に憑依する滝

渓谷を進むと、絶えず水音が聞こえることに気づく。この場では水が重要な構成要素となっており、その流動性や記憶を表現したのが《渓谷の森に憑依する滝》(2026)である。森のなかに現れる複数の滝の映像のなかを人々が通り抜けることで、映像の層が重なり合い、奥行きがより強調される。

「流れを見る作品」として位置づけられるのが、《生生流転柱》(2026)である。本作は強固な構造体を持たず、薄い膜状の素材に空気を送り込むことでその形態を維持する。しかし、その形状は送風の強度や向き、そして周囲の気流によってつねに変化し続ける。屋外展示という環境下では、空気の動きに伴って高さや動線がダイナミックに変容する。なお本作は無風または弱風時のみ公開される。

密集するように配置された光の卵形体(ovoid)で構成される作品が、《自立しつつも呼応する生命の森》(2026)である。それぞれの卵形体は、鑑賞者が触れたり風に吹かれたりして倒れると、自ら起き上がりながら光の色を変化させ、特定の音を響かせる。その変化は周囲の個体へと次々に伝播し、空間全体が呼応していく。物理的な動きを伴うこれらの個体は「動く彫刻」として定義されており、人の関与によって変動し続ける存在として立ち現れる。
会場にはほかにも作品が点在するが、いずれの作品も互いに影響し合うよう構成されている。通常は立ち入ることのない夜間の渓谷という環境が、鑑賞の没入感をより強くしていると言えるだろう。デジタルテクノロジーを用いた作品の存在が、長い年月をかけて形成された自然の造形への興味を喚起していた。
過ごしやすい春の夜、養老渓谷という土地で、長い生命の連なりの先に自己が存在することを見つめ直す。本展は、そうした新たな知覚をもたらす機会となるだろう。
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