第29回TARO賞は岡本太郎賞に高田哲男、敏子賞に馬場敬一【2/3ページ】

岡本太郎賞受賞:高田哲男

展示風景より、高田哲男《FUKUSHIMA5000》

 高田は1972年兵庫県生まれ、流通科学大学商学部流通学科卒業、神戸デザイナー学院夜間部卒業。2017年に兵庫県展デザイン部門大賞、2024年に第68会新槐樹社展新人賞、三木市文化芸術奨励賞を受賞しているほか、2023年の第26回岡本太郎現代芸術賞では入選した経験も有する。

 受賞作となった《FUKUSHIMA5000》は、東日本大震災や福島第一原発事故の被災地を訪れて描いた、5000枚超のドローイングで構成した作品だ。描かれているのは原発の炉心冷却や除染作業といった被災地で行われた具体的な行動のみならず、現地の人々の田畑の様子や肖像画、祭祀の様子なども描かれている。

展示風景より、高田哲男《FUKUSHIMA5000》

 高田は阪神大震災で家が半壊した経験を持つ。被害が大きく多くの報道陣が集まった都市部ではなかったものの、被災者ではあった。このときに生まれた当事者とはどこまでなのか、報道で大きく取り上げられない小さな声はどこにあるのか、という感情が活動の原点にあるという。2011年の震災後、石巻市でボランティアをし、多くの人の言葉を聞いたという高田は、テレビや新聞のニュースといった報道をもとにドローイングを開始。さらにその報道だけでは情報が足りないと感じ、自分が納得する情報として実際に現地の人々に話を聞いてドローイングを行なった。現地の生活の匂いをペンに載せるため、ドローイングという方法がとられているという。

展示風景より、高田哲男《FUKUSHIMA5000》

 審査員の椹木は本作について、以下のような審査評を寄せている。「東日本大震災から15年となる2026年。わたしたちの国土はなお、毎日のように地震で揺れ、津波に普戒し、そのたびに原子力発電所の安否に聞き耳を立てている。作者は、過ぎていった日々の積み重ねを、放射能で被災した地域の地方紙や報道などをもとに、誰にでも入手できる簡素な素材とインクボールペンで描いた延べ 5440枚(大震災から 5440日)の素描をもとに、巨大なモノクロームの集積に仕上げた。原発事故という甚大な出来事と、日々の記録とのギャップが、この塊の中で一体のものとなり、わたしたちの『現在』の前にうずたかく積み重なっている」。

編集部