続いて台湾で撮影したシリーズが紹介される。モノクロのシリーズ「緑の部屋」は、さらに「幽霊たちの庭」「花売りのおばあさん」「アメリカの村」「平和の島」という4つの小シリーズから構成される。会場はシリーズごとにオーガンジーのカーテンで仕切られており、まるで台湾の路地に迷い込んだかのような感覚を覚える。とくに決められた順路はなく、観客は薄いカーテンをくぐりながら、自由に作品を見ることができる。

2023年から2年間の滞在制作をきっかけに台湾撮影をはじめた上原は、実際に現地を訪れ、台湾と沖縄の歴史や文化に類似性を感じたという。改めて台湾について学び、自身との関係を思考するなかで、その過程そのものをかたちに残す必要があると考え制作したのが本シリーズである。4つの小シリーズでは、それぞれ特定の場所が取り上げられ、土地の歴史やその場で考えたことを上原の言葉で綴られたテキストも展覧されている。そのテキストとともに写真を見ることで、上原の目線を写真のなかに見つけることができる。


このシリーズのなかでとくに印象的なのは、上原の手が写った作品である。各シリーズに1枚ずつこの構図の作品があり、手の上には持ち帰ってきたお土産品が乗せられている。上原は訪れた先で撮影するだけでなく、その一部を自分の部屋や生活に持ち帰ることで、思い出したり考え続けたりする時間すらも作品として内包する。

「緑の部屋」から一変して、明るい照明の部屋で展覧されるカラープリントの「緑の日々」。本シリーズは、ホテルの一室にあるビールの空き缶に生けられた白い薔薇の写真からはじまる。じつはこの薔薇は、「緑の部屋」シリーズの「花売りのおばあさん」で登場したものと同一のものだ。シリーズごとにカーテンで会場がわけられていながら、シリーズ間に確かな連続性を感じさせるような構成である。
また同じ対象でも、モノクロとカラーではその印象が大きく異なることにも気付かされる。上原は、目の前にある風景を写す際はカラー写真、過去に起きた出来事を起点として現在を見つめ返すイメージの際はモノクロ写真、と表現方法を使い分けている。今回会場の入り口側に展示されている「眠る木」と「緑の日々」がカラー写真、奥側に展示されている「前の浜」「緑の部屋」がモノクロ写真であることを踏まえると、時間軸という切り口でも比較ができるような会場構成であることに気づく。



本シリーズは台湾を写した作品であるが、まるで沖縄を写した写真に見えるものもある。上原がいう2つの土地の類似性を体感できるだろう。全72点が出展された本展の最後は、《台湾 基隆》と題された青い色調が印象的な作品で締めくくられる。基隆は台湾の北に位置し、沖縄にもっとも近いエリアでもある。鑑賞者は、台湾から見える海を越えた先にある沖縄を想像しながら、沖縄を写した「眠る木」シリーズの会場に戻ってくる。

本展は、上原が10年間を通じて制作した作品を概観できる貴重な機会である。それだけでなく、撮影対象や手法の違いを比較しながら、上原が試みる様々な実践を追体験できるような会場構成となっている点は、本展の見どころのひとつだと言えるだろう。会期中に開催される、上原と作家・長島有里枝の対談(2月14日開催)もあわせてぜひ注目してほしい。



















