長島有里枝は1973年生まれ。武蔵野美術大学在学中の93年、自身の家族のヌードを撮った作品で「アーバナート #2」展パルコ賞を受賞し、デビューを果たす。2001年には蜷川実花、HIROMIXらとともに第26回木村伊兵衛写真賞を受賞。最近の展覧会に「そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」(東京都写真美術館、2017)、「Forever is Composed of Nows」(MAHO KUBOTA GALLERY、2017)などがある。
本展の起点となったのは、08年から文芸雑誌『群像』に連載され、09年に単行本化された長島による短編集『背中の記憶』(講談社)。同書では自身の幼少時代を基にした物語が生き生きと語られ、四世代にわたる家族の記憶を丹念に拾い上げた自伝的作品となっている。
そんな『背中の記憶』の点字による通読に応じた、ある全盲の女性との対話から得たインスピレーションを軸に構成される本展。長島が写真表現に対して抱き続けてきた疑問点をコンセプトの中心に据え、近作やインスタレーション作品のほか、未発表作品も展示される。
写真とテキストをそれぞれ自立したものとしてとらえ、ふたつの新しい関係性を探る今回の個展「知らない言葉の花の名前 記憶にない風景 わたしの指には読めない本」。「家族」や「女性」のあり方への違和感をパーソナルな視点から問い続けてきた長島の新たな試みに、期待が高まる。