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「上原沙也加 たとえすべての瓦礫が跡形もなくきれいに片付けられたとしても」(横浜市民ギャラリーあざみ野)開催レポート。生活と地続きにある風景を掬った10年間の軌跡【2/3ページ】

 本展は全4シリーズで構成されている。前半2シリーズは沖縄を、後半2シリーズは台湾を舞台に撮影された作品である。会場は大きく4つに分かれ、各シリーズを回り入り口に戻ってくる構成となっている。

 最初の会場では、2016年から22年にかけて沖縄島で撮影されたカラーのシリーズ「眠る木」が展開されている。これらは、5〜6年かけて沖縄の各地を歩き回り撮影されたものだ。対象をあらかじめ決めて撮影するのではなく、日々を過ごしながら目に留まったものを写す方法をとっており、その対象は、街なかのレストラン、写真店のショーウィンドウ、ショッピングモールの駐車場など様々である。ありふれた一場面でありながら、よく見るとそこに「沖縄らしさ」があるように感じられる。作品タイトルにはそれが撮影された土地の名前のみ示されているため、上原がその場面を切り取った意図を言葉で答え合わせすることはできない。しかしだからこそ、鑑賞者自身のなかにある「沖縄」へのイメージが顕在化させられる。

「眠る木」シリーズの展示風景
「眠る木」シリーズの展示風景
展示風景より、上原沙也加《沖縄県 北谷町 美浜》(2022)「眠る木」より Archival pigment print 59.4×84.1cm

 次の暗い部屋では、沖縄島で撮影したモノクロ(白黒)写真による最新作《前の浜》が紹介される。本作は、2025年慰霊の日(6月23日)の前後3日間に行われた、自室から慶良間諸島までの短い旅の記録として撮影されたものだ。今回はそれら約200点がスライドショーで上映され、すべての写真につけられた一行ずつの日記のようなキャプションが壁面に展示されている。慰霊の日は、1945年の沖縄戦において、日本軍司令官の自決によって組織的な戦闘が終わった日として制定された。上原は、沖縄が現在においても抱える被害の大きさから、沖縄戦は80年前に終わったのではなく、かたちを変えながらも続いていると考える。自身が直接経験していないことでも、過去に起きた事実がいまにどのように影響しているかを考えるために本作を制作した。写真とキャプションの両方から上原の眼差しを追体験することで、我々は何を感じるだろうか。

展示風景より、上原沙也加《前の浜》(2025) Slideshow of Photographs 16分40秒
展示風景より、《前の浜》が上映されている会場に展示されたキャプション
展示風景より、《前の浜》が上映されている会場に展示されたキャプション(一部)

編集部

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