青森県弘前市にある弘前れんが倉庫美術館で、開館5周年記念展の第2弾となる「杉戸洋展:えりとへり / flyleaf and liner」が開幕した。会期は2026年5月17日まで。
杉戸洋は1970年愛知県生まれ。92年に愛知県立芸術大学美術学部日本画科卒業後、国内外で作品発表を続けてきた。杉戸の作品には、小さな家や船、果物、木々や雨粒といった身近なものや自然が、線や幾何学的な図形とともに鮮やかな色彩で描かれる。
「えりとへり」という言葉がタイトルにつけられた本展では、杉戸は「余白」に目を向ける。余白とは、絵画の裏側に見られるキャンバスを囲む「えり」や「へり」、本の表紙をめくると現れる「あそび紙 (flyleaf)」や洋服の「裏地(liner)」など、あらゆる場所に潜むものを指している。本展は、そんな余白に心を傾けることから制作をはじめる杉戸の、90年代から最新作までの絵画を中心に紹介し、杉戸の作品世界に触れることができる機会となっている。
本展は明確な章立ては行われておらず、大きく2つにわかれた展示空間を広く使って展開されている。入ってすぐの空間中央には、ひとつの小屋が建っている。小屋の外側は木材そのままが見える状態だが、中に入るとカラフルな壁紙に覆われた空間が現れる。


今回この壁紙を手がけたのは、グラフィックデザイナーの服部一成だ。コラボレーターという立場で、ともに杉戸と本展をつくりあげた服部は、同館のロゴマークなどを手がけている。もとより同館と関係があった服部だが、今回のコラボレーションは、杉戸自らの呼びかけによって実現した。杉戸は、服部がアートディレクション(2002〜04年)を手がけたファッション雑誌『流行通信』にとても影響を受けており、今回の企画が持ち上がった当初から、『流行通信』が本展のキーワードのひとつとして挙がっていたという。

服部は、杉戸の作品によく登場するモチーフを用いて8種類の壁紙を制作した。杉戸の制作のインスピレーションのきっかけになるよう制作されたそれらは、実際、設営中の杉戸にたぶんに影響を与えた。約1週間の設営期間中に、壁紙が貼られた空間を発想源として新作が複数生み出された。2名のつくり手による即興的な応答の痕跡がそのまま空間に残されている。小屋の内外に展示される杉戸の作品と壁紙のデザインを見比べながら、その跡をたどってほしい。





































