尾道に佇む小さな宿。街に優しいあかりを灯す「LOG」の魅力とは【2/4ページ】

  LOGは3階建てとなっている。改修はしているものの、元となったアパートメントの面影を感じる部分もある。1階には、宿のレセプションを兼ねたショップがあり、プロジェクトを通して開発されたものやLOGで使用されている尾道の特産を使用した食料品、衣類、雑貨、LOGのためにデザインされたスタジオ・ムンバイ制作の家具などを購入することができる。

ショップの様子

 同じく1階にはダイニングが備わっている。LOGでは、衣食住において「循環すること」と「地のものを再発見すること」を重視しており、地域の畑や海から採れる四季折々の食材を使った料理を堪能することができる。ダイニングでは朝食(宿泊者のみ、7:30〜10:00)とディナー(18:00〜22:00)が提供されており、細川亜衣によって監修された料理の数々は、瀬戸内を味覚から堪能することができる。

 こだわりの食器が使われる点も食事の時間を豊かにするための工夫だが、必ずしも地元の食器や食材だけを使うわけではないという点が興味深い。地元に限らず、LOGにあうと感じたものを選ぶという姿勢を一貫させている。なかには、LOGをよく知るアーティストが、LOGのためにつくった食器を採用することもあり、世界観をつくり手とともに築いていく姿勢も見受けられる。

ダイニングの様子
ダイニングで提供される細川亜衣監修の朝食。季節の果物はみかん、スープには蕪とラディッシュが使われている

 2階には、宿泊者以外も利用できるカフェ&バー アトモスフィアがある。ここでは、夕方まで(11:00〜17:00)軽食やドリンクなどのカフェメニューが展開されている。スタジオ・ムンバイでの「休憩時間にチャイを飲む」という行為に着想を得たLOGオリジナルのチャイも堪能することができる。なお夕方からは宿泊者のみの利用となっており、音楽とともに国産ワインなどを楽しむこともできる。

カフェ&バー アトモスフィアの様子
カフェ&バー アトモスフィアの様子
カフェ&バー アトモスフィアのテラス席の様子。人気のレモンケーキとLOGオリジナルドリンクのチャイ

 同じく2階にあるギャラリーでは、LOGができるまでのプロジェクトの軌跡が展示されている。素材サンプルや図面、イラストを用いながら、スタジオ・ムンバイと5年間かけてつくりあげてきた過程を知ることができる。LOGの特徴のひとつに、施設内に印象的に用いられる「色」が挙げられるが、これはロンドンを拠点に活動するカラーアーティストのムイネル・ケイト・ディニーンとの試行錯誤によるものだ。ビジョイの手がける建築プロジェクトで色彩を任されているムイネル・ケイト・ディニーンは、LOGのために114のカラーレシピを制作した。

ギャラリーの様子
ギャラリーに展示されている「色」の見本