「ATAMI ART GRANT 2025 supported by Pasona art now」開幕レポート。生活動線に現れる非日常な体験を【2/5ページ】

 野中山マンションでは、9名の作家が作品を展開している。「NONAKAYAMA 3」の2階には、茨城県を拠点に活動するアーティスト・齋藤鷹と、京都を中心に活動する作家集団「モノ・シャカ」の作品が並ぶ。モノ・シャカは、展示のほかに、執筆、録音、鑑賞からなる参加型リレー小説の企画を実施し、インタラクティブな作品体験をつくり出している。

展示風景より、齋藤鷹の作品
展示風景より、モノ・シャカの作品。参加型リレー小説の「執筆」を行う様子

 1階には、「A Theater」という新しいシアターを熱海の街につくる試みが展開されている。プログラムディレクターに、映画監督・アーティストの石原海を迎え、地主麻衣子、遠藤薫、そして石原自身による語りを中心とした作品が上演される。さらに同じフロアでは、田中勘太郎による、会場の壁を打ち抜いた作品が紹介されている。物々しくも感じられるその空間では、既存の枠組みを「打ち破る」行為について、複数の視点から示唆が与えられる。

展示風景より、「A Theater」の様子
展示風景より、田中勘太郎が打ち破った壁

 同じく1階には、廃墟となった物置を舞台に、森山泰地のインスタレーション作品が広がっている。会期中、森山はここで寝泊まりをし、自らがここで過ごすことにより生まれる痕跡を残していく。

展示風景より、森山泰地の作品
展示風景より、森山泰地の作品。会場の真ん中に置かれたベッドで寝泊まりする