日本屈指の温泉リゾートである熱海。ここがいま現代美術のプロジェクトで変わろうとしている。
熱海の地で1973年に赤尾蔵之助が開業したホテルニューアカオ(今年10月に「ACAO SPA & RESORT」に名称変更)。同ホテルが中心となり今年3月、熱海の魅力をアートで再発見することを目指したアートプロジェクト「PROJECT ATAMI」をスタートさせた。
「PROJECT ATAMI」を構成するのは大きく2つ。滞在制作型プロジェクト「ACAO ART RESIDENCE」と、アーティストをサポートする公募プロジェクト「ATAMI ART GRANT」だ。
50組が熱海各所で作品展示
11月16日からは、公募によって選ばれた「ATAMI ART GRANT」のアーティストたちの作品を一堂に披露。130組以上の応募のなかから南條史雄や隈研吾らが審査し、これを通過した30組が参加している。参加作家はevala、小田佑二、吉良加奈子、栗山斉、小松千倫、Sareena Sattapon、高木賢祐、たかくらかずき、多田恋一朗、髙橋洋平、チャラン・ポ・ランタン、中島崇、中村壮志、鯰、二宮佐和子、ニミュ、ぬQ、濱口桜子、林加奈子、vug、藤生恭平、松井照太、松田将英、水川千春、宮崎勇次郎、宮原嵩広、モノ・シャカ、保良雄、山本修路、米澤柊。キャリアも表現技法も多種多様なラインナップだ。
会場はACAO SPA & RESORTをはじめ、熱海市内の23ヶ所におよぶ広範囲なもの。熱海の街巡りとともに展示を楽しみたい。
いっぽうの滞在制作型プロジェクト「ACAO ART RESIDENCE」の参加作家の一部もこれを機に公開。安部勇磨、市川平、石毛健太、遠藤一郎、大小島真木、太田光海、華雪、花坊、河野未彩、Keeenue、鈴木昭男、髙木遊、丹羽優太、BIEN、Hiro Tanaka、布施琳太郎、光岡幸一、宮北裕美、吉田山、渡邊慎二郎が参加しており、独特の場の力を持つACAO SPA & RESORTからインスパイアされた作品を見ることができる。
今回とくに注目したいのは、レジデンス参加者であるキュレーター・髙木遊による企画展「Standing Ovation | 四肢の向かう先」だ。
人工物/自然物の交わる景色に焦点を当てるとともに、旧本館(ホテル ニューアカオ)の記憶を未来に紡ぐ本展。鑑賞者はリーフレットに書かれた指示に従い、歴史あるホテル ニューアカオの内部に散りばめられた作品をめぐることとなる。作家はACAO ART RESIDENCEから太田光海、渡邊慎二郎、ATAMI ART GRANTから小松千倫、多田恋一朗、中村壮志、松田将英、保良雄が参加する。
熱海に500点の作品を
合計50組という芸術祭規模の作家たちが参加する今回。発起人であるACAO SPA & RESORT代表取締役会長CEO・東方文化支援財団代表理事の中野善壽は「アートを上手く使い、熱海のなかで拠点を増やしていく。日本一のアートを見られる街にしたい」としつつ、「熱海に500点の作品が揃うまで努力していきたい。アートで地方再生する手本になれれば」と意気込む。
また審査員を務めた南條は、ギャラリー空間ではないホテルや街なかに作品を展示する今回の試みを「チャレンジング」だとしながらも、「熱海の街を変えていく意気込みを感じる」と評価した。
なおACAO SPA&RESORTには、アート作品で訪れる人々を迎えるロビーミュージアムもオープン。BLOCK HOUSE / ISLANDによるキュレーションのもと、「HORIZON」と題して、大小島真木、河野未彩、BIEN、Keeenue、光岡幸一らの作品も並ぶ。
これまで現代アートの印象はほぼなかった熱海。ACAO SPA&RESORTがその変革の中心地となりそうだ。
12月6日追記:「ATAMI ART GRANT」ACAO SPA & RESORTホテル館内で開催中の特別キュレーション展「Standing Ovation 四肢の向かう先」は12月20日まで会期延長。