「琳派」は、江戸時代初期の本阿弥光悦や俵屋宗達らから始まり、元禄期を中心に、尾形光琳・乾山らが発展させた。その後、江戸後期の文化・文政期に光琳に傾倒した酒井抱一とその弟子である鈴木其一によって再興。抱一によって琳派は系譜づけられ、世に広まった。狩野派や土佐派のように、家系や師弟関係を中心とした流派とは異なり、作風に対する共感によって広まっていった流派である。
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琳派の作品に通底するのは、四季のうつろいや自然の美しさ、金銀をはじめとする鮮やかな色彩を駆使した飾りの美、絵画と工芸といった分野を越えた斬新な表現。それは屏風や掛幅などの絵画をはじめ、硯箱や着物、扇、印籠、陶器など様々な工芸品におよび、絵画と工芸といった分野にとらわれることなく、斬新で多彩な意匠が創出された。
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本展では、本阿弥光悦《花卉摺絵新古今集和歌巻》、尾形光琳《草紙洗小町図》、尾形乾山《銹絵染付梅花散文蓋物》、酒井抱一《藤蓮楓図》など、琳派の代表作家における絵画と工芸の優品を展観するというもの。今もなお私たちの生活のなかに生き続ける装飾芸術の粋、琳派の魅力を楽しむことができる。
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