「MEET YOUR ART FESTIVAL 2025」開幕レポート。五感を刺激するアートの祭典【2/5ページ】

 「Ahead of the Rediscovery Stream」は寺田倉庫G3ビルの6階が会場となる。最初に展示されるのは、八木良太と和泉侃の作品だ。人間がどのように世界を知覚しているのかを音響、映像、インスタレーションなどを通じて問いかけてきた八木は、2枚のパンチメタルで意図的に「モアレ」を発生させる円状の平面作品《Time Resonance》(2020)と、塔状に積み上げたスピーカーから金属的な水滴の音が響く《Stupa》(2018-25)を組み合わせて展示。

展示風景より、奥から八木良太《Time Resonance》(2020)、《Stupa》(2018-25)

 そして作品の展示場所には、嗅覚に訴える気配を作品としてつくり出す和泉による、原材料を育て調香した2つの香りによって対照的な世界を表す作品《香りの展示に関する研究》(2025)が漂う。両作家が手がけたこの世界は、本展が視覚のみならず多様な感覚を刺激する展覧会であることを端的に示している。

 昨年2月に逝去した折元立身も参加作家のひとりだ。自身の母親と制作した介護をアートとしてとらえる代表作「アートママ」シリーズは、第49回ヴェネチア・ビエンナーレ(2001)で広く世に知られることになった。生活空間とアートを同じ位相に置く折元は、顔にパンを巻き付けた人々が練り歩く「パン人間」のパフォーマンスでも知られる。

展示風景より、折元立身《パン人間》(2025)

 本展では同作を映像や写真で展示するほか、会期中には折元が亡くなって以来初の再演が行われる。作家亡き後だからこそ、属人化を超えて折元の行動を伝えていく試みといえるだろう。

展示風景より、折元立身《パン人間》(2025)