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「特別展 巨匠ハインツ・ヴェルナーの描いた物語ー現代マイセンの磁器芸術」(泉屋博古館東京)開幕レポート。300年以上の歴史を誇るマイセンの伝統と革新性をたどる【7/7ページ】

 エピローグ「受け継がれる意志」では、ヴェルナーの晩年作が登場する。1981年にハレのブルク・ギービッヒェンシュタイン美術大学で名誉教授の称号を与えられたヴェルナーは、1990年代以降マイセン内でも若いアーティストの育成に力を注いでいく。

 1993年にマイセンを定年退職した後も制作を続け、翌年には集大成とも言える《ドラゴンメロディ》を発表。「ドラゴンメロディ」は、ヴェルナーによる創作メルヘンだが、本作は《アラビアンナイト》《サマーナイト》につづき、オリジナリティを突き詰めたヴェルナーのメルヘン世界の集大成と言えるだろう。

展示風景より、《ドラゴンメロディ》コーヒーサービス(1994)
展示風景より、《ドラゴンメロディ》コーヒーサービス(1994)

 退職後も人望が厚いヴェルナーに対して、70歳かつ勤続55年(正確にはフリーランスの立場)の記念の年に、彼の新作をつくろうというアイディアが若い芸術家からあげられた。ヴェルナーのもとで絵付を学んだザビーネ・ヴァックス(1960〜)が手がけた器形に、ヴェルナーがヴェネツィアのカーニバルから着想を得て装飾を施したものが《祝祭舞踏会》である。

展示風景より、《祝祭舞踏会》コーヒーサービス(1998)

 ヴェルナーは、2019年に91 歳で逝去したが、直前までマイセンの新作発表カタログに名を連ねるほど、精力的に制作を続けたアーティストであった。ヴェルナーの教えを受け継ぐアーティストの活躍から、現代マイセンの歴史はいまもなお続いていることが伝わってくる。

 今回自身のコレクションを出展している勝山は、マイセンに対して次のように語る。「ドイツには様々な名窯があるが、いまだにすべて手描きで作品をつくり続けているのはマイセンくらい。職人による繊細で優美な一筆一筆をじっくりと見てほしい」。

 なお本展は、郡山市立美術館愛知県陶磁美術館細見美術館を巡回する予定だ。ぜひ美しい白磁に施された職人の技術を、実際に間近で見てほしい。

※画像はいずれも特別な許可を取り撮影

編集部