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東京都が芸術文化へのアクセシビリティ向上を発表。世界陸上・デフリンピックの開催を機に【4/4ページ】

様々な鑑賞サポートツールにも注目

 同日には、実際に都の文化施設で活用されている様々な鑑賞サポートツールも展示・紹介された。例えば、文法・言葉のレベルや文章の長さに配慮し、わかりやすく記載した「やさしい日本語によるガイド」が各館内で配布されている。これは海外にルーツを持つ方々のみならず、平易な文章や読みやすいレイアウトを好む方々の助けとなるものだ。

 また、東京文化会館では「やさしい日本語を活用した避難誘導ツール」が導入されており、薄暗い劇場内でも視認しやすいよう言葉や配色に工夫がなされている。

都立文化施設における「鑑賞サポートツール」の展示風景より、「やさしい日本語によるガイド①」
都立文化施設における「鑑賞サポートツール」の展示風景より、「やさしい日本語によるガイド②」「やさしい日本語を活用した避難誘導ツール」

 作品の情報を音声や点字で伝える「視覚支援ツール」や、鑑賞中の音や光、人混みといった外部刺激に過敏な方でも安心して過ごすことができるような「感覚過敏ツール」も様々な種類のものが用意されている。最近では、公共施設や企業などでも「カームダウンスペース」(*2)を設置する動きが広まっている。

都立文化施設における「鑑賞サポートツール」の展示風景、「視覚支援ツール」
都立文化施設における「鑑賞サポートツール」の展示風景より、「感覚過敏ツール」

 「触察模型・触図」のクオリティや鑑賞での使用方法には驚かされた。江戸東京たてもの園のような野外博物館での鑑賞サポートは他館に比べて難しいのではないかと思われたが、対象の模型を触ることでその性質の理解促進につながるようなツールも用意されているようだ。

 また、東京都美術館東京都江戸東京博物館といった施設では、絵画に描かれるイメージやその印象を触覚で感じることができるよう、表面に凹凸やテクスチャをつけるなどといった印刷技術を駆使したツールも設けられており、視覚に障がいを持つ方ならではの鑑賞体験の工夫がなされていた。

都立文化施設における「鑑賞サポートツール」の展示風景より、「触察模型・触図」
都立文化施設における「鑑賞サポートツール」の展示風景より、「触察模型・触図」

 これらのサポートツールのなかには、常時貸出を受け付けているものもあるため、利用したい場合は、まず各館内にある総合受付に尋ねてみるのがよいだろう。

 「デフリンピック」が100周年を迎えるタイミングで東京開催となったのは、アクセシビリティ向上におけるよい機運だ。都の文化施設で前例が生まれることによって、この支援の輪の全国的な広がりが期待される。

*2──周囲の音や光、人混みなどでストレスが高まった際に、それらを遮断することで気分を落ち着かせることができる空間。