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東京都が芸術文化へのアクセシビリティ向上を発表。世界陸上・デフリンピックの開催を機に【3/4ページ】

展覧会・公演等におけるアクセシビリティ向上の取り組み事例

 記者発表内では、先述した「東京芸術文化鑑賞サポート助成」採択団体等によるアクセシビリティ向上の事例紹介も行われ、 エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ株式会社と森美術館の各担当者らが登壇した。

 エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ株式会社は、昨年サンシャイン劇場で上演された『燃ゆる暗闇にて』でアクセシビリティ支援を実施。聴覚に障がいのある来場者には、公演中の「手話通訳」やアプリを用いた「字幕サポート」「台本タブレットの貸出」を、視覚に障がいのある方には開演前の「舞台説明会」や「音声ガイドサービス」などを実施した。

 これらの取り組みは、障がいを持つ来場者からは「舞台上で起こっていることが伝わり、よりよく作品を味わえた」「(いままで)ミュージカルを見る機会はほとんどなかったのでありがたかった」といったポジティブなフィードバックがあったいっぽうで、上演中のタブレットの光漏れや一般来場者への告知タイミング、そして必要経費などといった課題も明らかになったという。

「展覧会・公演等におけるアクセシビリティ向上の取組事例」説明の様子。登壇者は池永 聡子(エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ株式会社 制作事業本部)

 森美術館では、2020年に着任した館長・片岡真実による「(森美術館は)体験とストーリーを重視する」「五感を刺激する実体験を提供し、それぞれの作品背景にあるストーリーや文脈もふくめて理解する」といったメッセージをもとに、「障害のある方に対してプログラムを実施する」のではなく、「様々なバックグラウンドのある人々が同じ場所に集まり、現代美術を楽しむ場所」を目指し、様々なラーニング・プログラムを展開。プログラムの名称も「サインツアー」「手話ツアー」などから「ラーニング」「アクセス・オンライン・プログラム」と変更し、垣根をつくらないプログラムの実践を継続的に行っているという。

 現在は、同館が世界各地のアーティストと実験的なプロジェクトを行う「MAMプロジェクト」において、アメリカ手話を第一言語とするクリスティーン・サン・キムの展示を開催中。今後、同館では、障がいを持つアーティストのサポートにも力を入れていくという。

「展覧会・公演等におけるアクセシビリティ向上の取組事例」説明の様子。オンライン登壇者は白木 栄世(森美術館 ラーニング・キュレーター)