
中西夏之の《着陸と着水》も、本展の文脈で再構成されたインスタレーションである。2016年に逝去した中西は、生前『天人五衰』の最終章に登場する「何もない庭」に強い関心を寄せていた。本作では、一見何もない空間に“目に見えない皮膜”が存在しているという感覚を、視覚的に体感させるような構成が試みられている。

イギリスを代表する現代美術家アニッシュ・カプーアもまた、三島作品の熱心な読者であり、本展のために2点のドローイング作品を出品している。和紙に墨で描かれた作品は、日本的な余白や静寂を感じさせるいっぽうで、内に秘めた抑圧的な情念が漂い、『天人五衰』の「夏の日の庭」と共鳴する印象を与える。

いっぽう、小説家の平野啓一郎は、『豊饒の海』における「生と死の相克」をめぐって独自の作品を制作した。聖セバスチャンやキリストの殉教図から着想を得て、自著『三島由紀夫論』に鉄棒を貫通させるという行為によって構成された作品は、「文学だけでは不十分だったのだろうか」という問いを三島に投げかける。文学のなかで生を貫きたいとする自身の選択と、行動によって死を遂げた三島の美学との対比が鮮烈に浮かび上がる。



















