• HOME
  • MAGAZINE
  • NEWS
  • REPORT
  • 「三島由紀夫生誕100年=昭和100年 『豊饒の海』 永劫回帰に横た…

「三島由紀夫生誕100年=昭和100年 『豊饒の海』 永劫回帰に横たわる虚無展」(GYRE GALLERY)開幕レポート。三島由紀夫と「虚無」の時代を見つめて【2/4ページ】

展示風景より、森万里子「ユニティ」シリーズ(2025)

 展示の冒頭を飾るのは、森万里子による新作シリーズ「ユニティ」(2025)である。森は『豊饒の海』第1巻『春の雪』をもとに、主人公・清顕と聡子の魂のありかをテーマに制作を行った。輪廻転生や唯識論といった三島が参照した思想に呼応し、物語の背後に潜む形而上学的世界を可視化するような作品に仕上がっている。

展示風景より、ジェフ・ウォール《三島由紀夫 作『春の雪』第三十四章より》(2000–05)

 カナダ・バンクーバーを拠点に活動する写真家ジェフ・ウォールの写真作品《三島由紀夫 作『春の雪』第三十四章より》(2000–05)は、聡子と清顕が密会し、鎌倉の海岸で過ごした後、馬車のような車で送られる場面を再現したものである。靴に入った砂を取り除く聡子の仕草が、砂時計のように時間の儚さを象徴する印象的な一場面としてとらえられている。

展示風景より、杉本博司《相模湾、江之浦》《相模湾、江之浦》(いずれも2025)

 杉本博司は、『奔馬』と『天人五衰』の2つの場面を、それぞれ異なる海景写真によって表現。『奔馬』における自決の場面に登場する「日輪は瞼の裏に爀奕として昇った」という一節は、小田原の海の風景と重ねられた。また『天人五衰』では、「記憶もなければ何もない庭」という言葉を手がかりに、虚無の極点を写し出すような静謐な作品が展示されている。

編集部