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「ルイジ・ギッリ 終わらない風景」(東京都写真美術館)開幕レポート。何が風景なのか、何が風景ではないのか【5/5ページ】

 最後となる第Ⅴ章「アトリエの風景―内と外/材と不在」では、建築家のアルド・ロッシや画家のジョルジョ・モランディの、アトリエを撮影した写真が最も大きな見どころとなるだろう。

展示風景より、左が《ボローニャ、1989-90》「ジョルジュ・モランディのアトリエ」より

 とくにモランディのアトリエをとらえたシリーズは、まさにモランディの作品に出てきそうな典型的な静物を、静物写真としてとらえている。極めて単純な被写体ではあるが、その背景や小物、あるいは光の回り込みと影のグラデーションなどからは、不思議なことにモランディの筆致に似た、ギッリの眼差しを感じずにはいられない。モランディのアトリエの静物を使い、モランディの絵画のような写真作品をつくる。風景と対峙し続けたギッリがたどり着いた、内部も外部もすべて取り込んで、対象の周囲にあったあらゆる景色を同時に立ち上がらせるような「静物という風景」がここに宿っているようにさえ感じる。

展示風景より、右が《グリッツァーナ・モランディ、1989-90》「ジョルジュ・モランディのアトリエ」より

 あらゆる風景がスマートフォンで撮影され、また撮影をするための風景があらゆる場所で用意される。この時代にあえて、我々は何を「風景」としてきたのか、あるいは何が「風景」ではないのかを深く考えさせる作品群が本展にはある。風景の多様性、あるいはその暴力性も含めて、静かに、鋭い問いをなげかけるギッリの視点が光る展覧会だ。

編集部

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