全国の美術館で個展も開催してきた荒井良二の《ゆきのげきじょう》は、雪とともに生活する町で起こった、男の子、父、友人の小さな事件を描いた作品。会場ではわかりやすいストーリーよりも、コマ割りのように独立したシーンを重ねていく本作の表現を生み出した、大量のラフスケッチを見ることができる。絵本作家が「物語」ではなく「絵」をどのように組み立てて行くのかが可視化された。

たじまゆきひこ《なきむしせいとく 沖縄戦にまきこまれた少年の物語》は、沖縄に40年以上に通い続け取材をしてきたたじまの、集大成ともいえる作品。兵器や軍隊の冷たさと、沖縄の自然や人々の生命感を対比的に演出する手法が、沖縄の悲しい歴史と現状を後世に必ず語り継ぐという作者の強い意志を感じさせる。
