特別展「桜 さくら SAKURA 2025」(山種美術館)レポート。美術館で一足早いお花見を【2/3ページ】

 日本各地にある様々な桜の名所。第2章にはそれらを描いた作品が並ぶ。主役と言えるのは奥村土牛の《醍醐》(1972)だろう。京都・総本山醍醐寺三宝院の「太閤しだれ桜」を柔らかな色合いでとらえた山種美術館所蔵のなかでも代表的なもの。土牛は1963年に師・小林古径の7回忌法要で奈良を訪れ、その帰りに醍醐寺に立ち寄っている。その際は写生のみだったが、9年後に再訪を果たし、本作の完成至った。何度も塗り重ねされた絵具と胡粉によって、柔らかな春の空気が画面全体を覆っている。

展示風景より、奥村土牛《醍醐》(1972)

 第3章では、桜の花木そのものを主題とした作品がまとめられた。横山大観の《春朝》(1939)は、朝日に輝く山桜が画面を覆う、これぞ大観というべき作品だ。金泥で描かれた霞が春の暖かな空気をより感じさせる効果を果たす。

展示風景より、横山大観《春朝》(1939)

 川端龍子の《さくら》(20世紀)も面白い。花ではなく、桜の木の幹にフォーカスし、画面のほとんどを幹が占めるという珍しい構図の作品だ。絹本に彩色することで生まれたぼかしが、木の幹の複雑な色彩を伝えている。

展示風景より、川端龍子《さくら》(20世紀)

編集部

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