• HOME
  • MAGAZINE
  • NEWS
  • REPORT
  • 「特別展 武家の正統 片桐石州の茶」(根津美術館)レポート。…

「特別展 武家の正統 片桐石州の茶」(根津美術館)レポート。江戸の武家茶道を牽引した知られざる茶人に迫る【3/3ページ】

広がり、継がれた武家茶道の精神

 将軍家と大名の支持を得た石州流は、江戸城はもとより、各藩でも茶道職を担い、幕末に至るまで全国に広まっていく。そこには、一子相伝の家元制度ではなく、免許皆伝の形で継承されたことが大きく寄与している。

 各藩に大切に伝えられた石州流の茶書に、石州作または旧蔵の道具を譲り受けた主要な大名茶人や茶匠が紹介される。幕末の大老・井伊直弼が桜田門外で暗殺される3年ほど前の安政4年(1857)の茶会記録に残る、石州旧蔵で井伊家伝来の青磁花入や、相撲の番付表になぞらえた茶人番付の摺物に書かれた茶人の名からは、いかに石州流が武家社会に広く、長く、深く浸透していたのかを感じられるだろう。

「四、石州の茶の広がり」展示風景より
「四、石州の茶の広がり」展示風景より、「石州流」の茶書
「四、石州の茶の広がり」展示風景より、《蔦蒔絵棗》(江戸時代・17世紀、個人)。品川東海寺の怡渓宗悦が「石州公好」と箱書した茶器。木地目を活かした蒔絵の妙に注目
「四、石州の茶の広がり」展示風景より、《青磁筒花入》(明時代・16~17世紀、彦根城博物館) ※前期展示(~9/9)後期には井伊直弼の茶会記に登場する花入と考えられる石州作の「竹尺八花入」が展示される
「四、石州の茶の広がり」展示風景より、 《東都茶入大相撲》(江戸時代、嘉永4年・1851、個人)。幕末の茶人番付表では中央と両側の袖に「石州派」の重鎮の名が刻まれる

 あまり知らない茶人をたどる展覧会、ちょっと地味......と感じるかもしれないが、侘びと豪華を併せ持ち、200年以上、江戸の文化人を惹きつけた、その魅力を追ってみたい。そこには現代でも新鮮な大胆さと繊細さも見いだせるのだから。

 渋い好みを味わった後には展示室5で《百椿図》を。江戸の椿ブームに乗って、当時の知識人たちが表した歌と咲き誇る多様な椿の長巻絵巻は、初公開の板谷波山のかわいらしい椿の香炉とともに鮮やかな色彩で楽しませてくれる。

展示室5「百椿図 ―江戸時代の椿園芸―」展示風景より
展示室5「百椿図 ―江戸時代の椿園芸―」展示風景より、初公開の板谷波山作 《彩磁椿文香炉》(大正時代・20世紀、根津美術館[三嶋英子氏寄贈])

編集部

Exhibition Ranking

内藤礼「breath」

2025.02.14 - 03.28
タカ・イシイギャラリー 六本木
恵比寿 - 六本木|東京