米谷健+ジュリア「CRYSTAL PALACE」(art cruise gallery)開幕レポート。ウランガラスのシャンデリアが示すものとは?【2/2ページ】

 本展では、代表作であるインスタレーション《クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会》から9点が展示室に浮かぶ。

 本作は、1851年に開催された世界初の万博、ロンドン万国博覧会の会場としてハイドパークに建てられた全面ガラス張りの巨大建造物「クリスタルパレス(水晶宮)」に由来するもの。現在、世界で原発による発電を行っている国は32あり、ふたりはそのすべてを制作。一点一点に原発保有国名がつけられており、サイズはその国の原発からつくり出される電力の総出力規模(メガワット:IAEA資料参考)に比例している。

 例えば本展では、ウクライナや北朝鮮、韓国、スイス、ベルギー、ロシアなどが並ぶが、なかでもスペースの中央に浮かぶ中国が群を抜いて巨大だ。

展示風景より、《クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会(ウクライナ)》
展示風景より、《クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会(中国)》
展示風景より、《クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会(中国)》

 地球温暖化と電力需要の拡大が進むなか、原子力発電の需要は高まりを見せている。いっぽう、原発は自然災害や人間の過ちによって、取り返しのつかない大きな被害を与える側面があることは否めない。

 米谷健+ジュリアが見せる、ウランガラス特有の妖しくも美しい緑の光は、世界中で展開される産業政策と経済発展の影に存在する問題を可視化し、問いかける。

展示風景より、《明日世界》

編集部

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