角川武蔵野ミュージアムがグランドオープン。「荒俣宏の妖怪伏魔殿2020」や「米谷健+ジュリア展」も開幕
11月6日、埼玉県所沢市に「ところざわサクラタウン」がグランドオープン。同敷地内にある「角川武蔵野ミュージアム」も同時にグランドオープンを迎える。オープニングでは「荒俣宏の妖怪伏魔殿2020」や「米谷健+ジュリア展 だから私は救われたい」などが開催される。
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11月6日、埼玉県所沢市に「ところざわサクラタウン」がグランドオープンし、同敷地内にある「角川武蔵野ミュージアム」も同時にグランドオープンを迎える。
ところざわサクラタウンとは、KADOKAWAと埼玉県所沢市が、「みどり・文化・産業」が調和する地域づくりを目指し、協働で建設した巨大施設。そのなかの文化の発信拠点に位置づけられているのが、角川武蔵野ミュージアムだ。
すでに7月のプレオープンで「隈研吾/大地とつながるアート空間の誕生 ― 石と木の超建築」が開催されていた同ミュージアム。今回のグランドオープンで5階すべての施設がオープンする。
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建物内部は5階建てとなっている。1階には約1000平米の空間を持つ「グランドギャラリー」と「マンガ・ラノベ図書館」を開設。2階は総合インフォメーションやカフェ、ミュージアムショップ、3階はアニメを文化として紹介する「EJアニメミュージアム」だ。4階は、美術館・図書館・博物館が融合したミュージアム「エディットタウン」、5階が武蔵野の歴史や魅力を探求し紹介する「武蔵野回廊」と「武蔵野ギャラリー」、そしてレストランで構成される。
「荒俣宏の妖怪伏魔殿2020」(グランドギャラリー)
まず、1階のグランドギャラリーで行われるグランドオープン後の第1弾展覧会は「荒俣宏の妖怪伏魔殿2020」(11月6日〜2021年2月18日)だ。角川武蔵野ミュージアムの博物部門のディレクターを務める博物学者の荒俣宏が、これまで研究してきた成果を自身のコメントとともに資料や人形の展示で紹介していく。
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同展では妖怪が描かれてきた歴史を知るうえでの貴重な資料を展示。博物学者・佐藤清明(1905~1998)が編纂した日本で最初の妖怪辞典と言われる『全国妖怪辞典』(1910)や、荒俣が注目する珍品コレクター・三田平凡寺(1876〜1960)の集めた幽霊画や妖怪絵が紹介される。
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また、秋田県の村の入口と出口に祀られる道祖神も実物が展示。「カシマサマ」「ショウキサマ」などと言い表され、古くから守り神として慕われてきたワラの道祖神たちの素朴なディティールを、間近で見ることができる。
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さらに、映画『妖怪大戦争』(2005)の撮影で使用された妖怪を展示したコーナーのほか、小説家であり妖怪研究家の京極夏彦の単行本表紙を飾った張り子作家・荒井良による張り子の面も展示。出版やメディアミックスを長く手がけてきたKADOKAWAならではの展示と言えるだろう。
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エディットタウン/「米谷健+ジュリア展 だから私は救われたい」(エディットアンドアートギャラリー)
4階「エディットタウン」は、編集工学研究所の所長・松岡正剛が監修した2.5万冊の図書が並ぶ図書館「ブックストリート」や「本棚劇場」のほか、「エディットアンドアートギャラリー」「荒俣ワンダー秘宝館」などで構成される。
5階までの吹き抜けを覆うように設置された「本棚劇場」は「エディットタウン」のランドマーク的存在で、高さ8メートルの巨大本棚には、KADOKAWAの刊行物のほか、角川源義文庫、山本健吉文庫、竹内理三文庫、外間守善文庫など、個人の蔵書が一堂に並ぶ。
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また、「エディットタウン」の入口では、疫病を予言し退散すると言われる江戸時代の妖怪「アマビエ」を会田誠が描いた《疫病退散アマビヱ之図》(2020)を展示。同作は、同館の2階エントランスでも引き伸ばされた大型パネルが展示されている。今後も「コロナ時代のアマビエ」をテーマに、鴻池朋子、川島秀明、大岩オスカール、荒神明香らが作品をリレー形式で制作し展示する予定だ。
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「エディットアンドアートギャラリー」の第1弾展覧会は、「米谷健+ジュリア展 だから私は救われたい」(11月6日〜3月7日)で、米谷健+ジュリアの日本初の大規模個展となっている。
限られた照明のみが用意された展示室の暗闇で輝く《クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会》(2012)は、ウランガラスで制作されたシャンデリアに原発保有国の名前をつけ、美しい意匠に原子力利用についての疑念を込めた作品だ。
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また、レオナルド・ダ・ヴィンチ《最後の晩餐》をモチーフに制作された《最後の晩餐》(2014)は、作家たちが居住するオーストラリアの大規模農業による塩害をテーマにした作品。塩害で発生した塩を素材に誰もが知る象徴的な絵画の場面をつくることで、環境に向かい合う視点とともに、食の安全性に対する疑念と不安を想起させる。
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さらに国内初公開となる《大蜘蛛伝説》(2018)は、1950年代に天然ウランの採掘が行われた岡山県の人形峠にいたとされる伝説の巨大蜘蛛を立体で制作。巨大なウランガラスの蜘蛛が暗闇に浮かびあがる姿は、ウランという鉱物がもたらした強大な原子力に対する示唆を与えてくれる。
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ほかにも「エディットタウン」のなかには、荒俣宏が監修し、自身が世界中から集めた珍品、標本、宝物、模型が並べられた「荒俣ワンダー秘宝館」も設置。見るだけでなく、実際に触ることで自然や文化の奥深さに触れることが可能だ。
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武蔵野回廊/「武蔵野三万年ことはじめ」(武蔵野ギャラリー)
5階の「武蔵野回廊」では、民俗学者の赤坂憲雄が監修・選書した、武蔵野を再発見するための幅広い分野の本を陳列。また、併設される「武蔵野ギャラリー」では、武蔵野をテーマとした展覧会を開催する。
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武蔵野ギャラリーでは、当面のあいだ「武蔵野三万年ことはじめ」と題した展覧会を開催。三万年の太古から人が住み、中世より歌にも読まれてきた歴史ある武蔵野の再定義を試みる展示を行なう。
展示では、角川書店の創業者である角川源義が50年代に撮影した貴重な武蔵野の風景写真や、源義が師事した柳田國男、折口信夫らの研究を紹介。また、イラストレーター・Toy(e)が描き下ろした武蔵野の巨人「ダイダラボッチ」も展示される。
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美術・博物・図書を横断的に扱いながら、文化全体を包括的に紹介しようとするKADOKAWAの思惑が感じられる角川武蔵野ミュージアム。今後の展覧会にも期待したい。
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